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TORENDIA

「屍の街」

本文約550字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

広島の川原で怪物のようになり果てた人々の姿を目撃した著者が、原子爆弾投下後の惨状を綴る。被爆により自らも傷を負った一人の女流作家が、迫りくる死の恐怖と向き合いながら、目撃した地獄の光景を記録する責任感と、戦争そのものへの抗議を込めて執筆する過程を描く。焦げた皮膚や腫れ上がった顔など、凄惨な体験の断片を克明に記すことで、二度と繰り返してはならない戦争の悲劇と、生きる者たちの痛切な叫びを世に問いかける。

原民喜

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🎧 「屍の街」 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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私はあのとき広島の川原で、いろんな怪物を視た。男であるのか、女であるのか、ほとんど区別もつかない程、顔がくちゃくちゃに腫れ上って、随って眼は糸のように細まり、唇は思いきり爛れ、それに痛々しい肢体を露出させ、虫の息で横たわっている人間たち……。だが、そうした変装者のなかに、一人の女流作家がいて、あの地獄変を体験していたとは、まだあの時は知らなかった。

「なんてひどい顔ね。四谷怪談のお岩みたい。いつの間にこんなになったのかしら」と大田洋子氏は屍の街を離れ、田舎の仮りの宿に着いたとき鏡で自分の顔を見ながら驚いている。それから、無疵だったものがつぎつぎに死んでゆく、あの原子爆弾症の脅威を背後に感じながら「書いておくことの責任を果してから死にたい」と筆をとりだす。こうした必死の姿勢で書かれたのがこの「屍の街」である。銅色に焦げた皮膚に白い薬や、油や、それから焼栗をならべたような火ぶくれがつぶれて、癩病のような恰好になっていた。これは、この著者が目撃した、惨劇の一断片であるが、こうした無数の衝撃のために、心の傷あとはうずきつづけるのだ。著者は女性にむかってこう訴えている。

生きなくてはならない一人の女の右手が、永久にうしなわれて行くのでしたら、戦争そのものへの抗議と憎悪が日本中の女の胸に燃え立つはずです。

完

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