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TORENDIA

重兵衛さんの一家

本文約7,100字 ・ 読了時間 約15分

あらすじ(AIが作成しました)

明治十四年から土佐で暮らす幼少期の著者と、門脇に住む商人一家との交流を綴る。土地の周旋業を営む一家の主は、夕涼みの晩酌の席で怪談や奇抜な笑話を子供たちに語り聞かせた。著者はこの情景を通じ、家柄による物質的・精神的な差異を象徴的に感じ取るとともに、学校教育では得られない豊かな空想力や直観的な知を学んだ。家族の面影や彼らが人生に与えた影響を回想し、無意識下の教育の重大さを考察する随筆である。

寺田寅彦

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🎧 重兵衛さんの一家 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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明治十四年自分が四歳の冬、父が名古屋鎮台から熊本鎮台へ転任したときに、母と祖母と次姉と自分と四人で郷里へ帰って小津の家に落ちつき、父だけが単身で熊本へ赴任して行った。そうして明治十八年に東京の士官学校附に栄転するまでただの一度も帰省しなかったらしい。交通の便利な今のわれわれにはちょっと想像し難いほどの長い留守を明けたものであるが、若い時から半分以上は他国を奔走してばかりいた父には五年くらいの留守は何でもないことであり、留守を守る祖母や母も当り前の事と思っていたものらしい。当時の土佐と熊本とでは、心理的には今の日本とカリフォルニアくらいのへだたりがあったのである。郷里へ引上げると間もなく次姉は市から一里くらい西のA村に嫁入りをしたので、あとは全く静かな淋しい家庭であった。その以前から長姉の片付いていたB家が三軒置いた隣りにあって、そこには自分より一つ年上の甥が居たから、自分の幼時の多くの記憶はこの姉の家と自宅との間の往復につながっている。それと、もう一つ、宅の門脇の長屋に住んでいた重兵衛さんの一家との交渉が自分の仮想的自叙伝中におけるかなり重要な位置を占めているようである。

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