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根子の番楽・金砂の田楽

本文約8,400字 ・ 読了時間 約17分

あらすじ(AIが作成しました)

根子の番楽は出羽奥州に伝わる神楽系統の芸能であり、若者が舞う青年舞を中心とした構成を持つ。一方、金砂の田楽は田遊びに由来する古風な芸能であり、東西で異なる様式や乱声などの特色を保持する。本書はこれら東北地方の伝統的な芸能を考察し、能楽との類似点や独自性、また歴史的な伝播の過程や各地方特有の祭礼との結びつきについて、当時の演目や所作を詳述しながら、日本の芸能の変遷を多角的な視点から論じるものである。

折口信夫

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今度秋田県北秋田郡荒瀬村根子といふ山の中の村から、番楽といふものが来る。番楽といふのは、奥州のあちらこちらにあるので、多く此字をあてゝゐるが、この字が当るかどうか訣らぬ。何かの参考になる様なお話をしよう。

東北の芸能

日本の舞踊には、人間の性とか年齢とかによつて異るといふ規則がある。つまり、老人の舞ひ・処女の舞ひ・青年の舞ひと、此三つが、祭りの時に行ふ舞踊の重要な要素になつてゐるので、根子の番楽は、青年の舞ひが中心になつてゐる。併し、其中に青年のもの以外に独立してゐる舞ひもあるやうだ。尤、或部分は青年がするが、元から皆青年がしたとは言へない。

此は、出羽奥州に通じて行はれてゐる神楽系統の芸能の一つである。出羽奥州に行はれてゐる神楽といふものは、果して正確に、我々の考へてゐる神楽と言つていゝかどうかは問題だが、彼方では、凡そ神楽と言つてゐる。だが、神主・禰宜の神楽と、山伏の神楽とに、大体分れてゐる。ひつくるめて言へば神楽と言へるが、地方によつて、名が変り、同時に分裂してゐて、其地方特有の祭礼の歴史と結び付いたりもして、部分々々が残つてゐるといふ形になつてゐるのである。併し、此他に、出羽奥州を通じて、別系のものが無かつたとは言へない。別系のものがあつたのが、大きな神楽が這入つて来た為に、其中に取り込まれて了うた、と見た方がいゝのかも知れない。とにかく、簡単なものではなからう。

東北の神楽系統の芸能で、番楽といふ名をもつてゐるのは、凡そ翁・三番叟であるらしい。こゝの舞ひには、裏舞ひといふものがある。其に対して、元のものを表舞ひといふ。中央から西にかけて、古い芸を留めてゐるものが、もどきを持つてゐるのと同じだ。併しもどきよりはまう一層形のきまつたもので、もどきは、形が極つても即興的な意味をもつてゐるが、裏舞ひとなると、表舞ひと同じく固定して了つたものと思はれる。

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