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TORENDIA

ゴルフ随行記

本文約3,500字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

赤羽のゴルフ場を訪れた著者が、M君やN君と共にリンクを歩き、球技の光景を観察する。広大な芝生やキャディの少年の様子、競技に打ち込む人々の姿を眺めつつ、人間がなぜ球を弄ぶことに興味を抱くのかという本能的な起源に思いを馳せる。本書は、ゴルフの見学を通じて、球技が持つ遊戯的側面と、太古から続く人類の営みや動物の行動との関連性を考察し、最後には煙草に関する独自の視点を交えて、日常の観察から得た思索を綴る随筆である。

寺田寅彦

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🎧 ゴルフ随行記 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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ずっと前からM君にゴルフの仲間入りをすすめられ、多少の誘惑は感じているが、今日までのところでは頑強に抵抗して云う事を聞かないでいる。しかしとにかく一度ゴルフ場へお伴をして見学だけさせてもらおうということになって、今年の六月末のある水曜日の午前に二人で駒込から円タクを拾って赤羽のリンクへ出かけた。空梅雨に代表的な天気で、今にも降り出しそうな空が不得要領に晴れ、太陽が照りつけるというよりはむしろ空気自身が白っぽく光り輝いているような天候であった。

震災前と比べて王子赤羽界隈の変り方のはげしいのに驚いた。近頃の東京近郊の面目を一新させた因子のうちで最も有効なものと云えば、コンクリートの鋪装道路であろうと思われる。道路に土が顔を出している処には近代都市は存在しないということになるらしい。

荒川放水路の水量を調節する近代科学的閘門の上を通って土手を数町川下へさがると右にクラブハウスがあり左にリンクが展開している。

クラブの建物はいつか覗いてみた朝霞村のなどに比べるとかなり謙遜な木造平家で、どこかの田舎の学校の運動場にでもありそうなインテリ気分のものである。休憩室の土間の壁面にメンバーの名札がずらりと並んでいる。ハンディキャップの数で等級別に並べてあるそうだが、やはり上手な人の数が少なくて、上手でない人の数が多いから不思議である。黒板に競技の得点表のようなものが書いてある。一等から十等まで賞が出ている。これなら楽しみが多いことであろう。賞品は次の日曜日に渡しますとある。人間いくら年をとっても時には子供時代の喜びを復活させる希望を捨てなくてもいいのである。

M夫人が到着したのでそろそろ出掛ける。

一体の地面よりは一段高い芝生の上に小さな猪口の底を抜いて俯伏せにしたような円錐形の台を置いて、その上にあの白い綺麗なボールを載せておいて、それをあのクラブの頭でひっぱたくと一種独特の愉快な音がする。飛んで行った球がもう下り始めるかと思う頃に却ってのし上がって行ってそれから落ちることがある。夫人の球が時々途中から右の方へカーヴを描く。球がそれて土手の斜面に落ちると罰金だそうである。

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