本文へ移動
TORENDIA

スポーツ・文学・政治

本文約6,600字 ・ 読了時間 約14分

あらすじ(AIが作成しました)

著者自身が執筆中の小説やスポーツ、政治に対する独自の批評を展開する。スポーツマンの心理分析やスピード重視の理論を語り、文学については健康で遊び心のある創作姿勢を強調する。政治に関しては、大衆の生活を軽視する国内政党や共産党の現状を批判し、革命の段階にある日本社会の未熟さを説く。探偵小説の執筆計画や、他作家の作品に対する忌憚のない評価も含め、多角的な論説を収める。

坂口安吾

速度
🎧 スポーツ・文学・政治 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 8

スポーツ談議

いま僕の書いている『スキヤキから一つの歴史がはじまる』は、はじめにスポーツマンが主人公になっているせいか、スポーツ精神といったものを書いているせいか、とにかくスポーツマンに評判がいゝ。ボクをスポーツ精神の真髄に徹した大スポーツマンだと思っているらしい。ところが、あれは大体、スポーツをやった男の心理はこんなものだろうと想像で描いているだけで、ボクはそれほど実際のスポーツマンじゃない。またモデルだって一人も実際のはいはしない。スポーツでボクがやったのはジャンプ――三段跳び、走高跳び――水泳、それから柔道、これは割に強くて段つきになったが、立業では敗けたことがない。たゞどうも寝業は苦手で弱かった。

日本野球のさる選手がボクを大選手、大先輩とあがめているという話だが、野球はそんなにうまいわけじゃない。むしろヘタクソだ。この間文士のチームをつくって文藝春秋新社と試合したが、一番うまいのは井上友一郎、それから河上徹太郎、石川達三もまあかなりうまい、ボクなんか非常にヘタなんだが、たゞ一所懸命敢闘する、全力でやる、敢闘精神だけは実に旺盛なんだ。

この前東大病院に入院していたときも、内村教授から外出を許して貰って後楽園へよく野球見物に行った。内村という人は日本の野球界の大先輩だが、あれくらい一流の人物になると、すべて万事に通じている。エライ人で戦後のニュー・フェイスの一人だね。あの人が野球評論を書き出したんだが、実に思想が新しく、大胆で、これまで日本になかったものを持っている。

別府星野組の荒巻という投手、あいつは非常な秀才なんだそうで、学校を首席で出て、職業野球に入らないで東大に入りたい気持があるというので、東大野球部の連中がぜひ引っぱるように内村さんのところへたのみに来たんだ。すると、内村さんは、どうせ東大を卒業しても職業野球に入り、野球で飯を食うべき人なんだから、三年無駄にしないで、今すぐ野球に入った方がいゝ、と答えたんだ。こうした考え方なんか終戦までなかったんだ。実に新鮮な思想だよ。

坂口安吾の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本