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TORENDIA

二科狂想行進曲

本文約970字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

中古の伝統長屋に住む書き手が、二科展の展覧会批評を執筆する様子を綴る。大地震の気配や騒々しい路地の風景、多種多様な色や音が入り混じる絵画制作の光景を叙述し、蒸し暑い日の混沌とした気分を詩的な散文で描く。マルクスやムッソリニ、動物園の象などが混沌と交差し、芸術と科学が各々存在することを強調しながら、展覧会を見た際の高揚感と疲労が混ざり合った独特の感覚を記す。

寺田寅彦

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🎧 二科狂想行進曲 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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一

古い伝統の床板を踏み抜いて、落ち込んだやっぱり中古の伝統長屋。今度の借家は少し安普請で、家具は仕入れ。ボールの机にブリキの時計、時計はいつでも三十度くらい傾いて、そして二十五時のところで止っている。いつまでも止っている。今度の大地震の来る日までは。

二

大掃除の午後の路地の交互点、こわれたおもちゃに葱大根の尻尾、空瓶空ボールの交響楽、マルクス、ムッソリニの赤ん坊の夢を買わないか。汚いものは美しく、美しいものはきたなく。のっぺりの中へ少しこまこまと金銀紫銅のモール。昼食か、そこへおきな。

三

黄は睨み朱は吼える、プルシアンブルーはうめく。鏝で勢いよくきゅうとなでて、ちりちりぱっとくくりをつけて、パイプをくわえて考え込んで、モンパリー、チッペラリー、ラタヽパン。そこでノアルで細筆のフランス文字、ブルバールデトセトラ。

四

脚は一八〇プロセントくらいに、眼と眼はうんとくっつけるか、思い切り開いて、さてこの腕をどうやろう。寛永寺の鴉より近い処にビッシェール、ロート。顔のここらへちょっと一刷毛、どうですこの色は新しいね。トラヽイラヽララー、絵具の払いはいつでもよい。

五

地獄変相図の世界国ノアの洪水、ソファの下から這出した蜘蛛蟹のお化け。熱つや苦しや、通風の悪い残暑の人いきれ。観音様が流行らないなら、モガの一人も張り飛ばして、食堂でアイスカフェーの食券一枚。

六

大家は大家で小家は小家、そして中家は中家で世紀はめぐる。鯛の頭に孔雀の尻尾。動物園には象が居るよ。植物園は涼しいね。マルクスが何と云っても絵画は絵画で科学は科学です。ヴォアラ、ネスパ、セッサ、ムシュー、アラマディ、プレンプアン、ラタヽパン。

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