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TORENDIA

病室の花

本文約6,400字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

入院した著者が、病室の窓辺に置かれたベコニアや蘭、サイクラメン、ポインセチアなどの花々を眺めながら綴る随筆。異国の思い出や来客とのやり取り、かつて見舞った師との記憶が、生と死、偶然と必然の因果、そして植物が放つ生命の輝きについての思索を呼ぶ。退院後、枯れゆく花を想いながら、病床での日々の出来事や他者の存在が自身の内面に投げかけた光と影を振り返り、その記憶をかけがえのない貴重な経験の記録としてまとめる。

寺田寅彦

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🎧 病室の花 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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発病する四五日前、三越へ行ったついでに、ベコニアの小さい鉢を一つ買って来た。書斎の机の上へ書架と並べて置いて、毎夜電燈の光でながめながら、暇があったらこれも一つ写生しておきたいと思っていたが、つい果たさずに入院するようになった。

入院の日に妻がいろいろの道具といっしょにこの鉢を持って来た、そして寝台のすぐ横にある大理石を張った薬びん台の上に載せた。灰色の壁と純白な窓掛けとで囲まれたきりで、色彩といえばただ鈍い紅殻塗りの戸棚と、寝台の頭部に光る真鍮の金具のほかには何もない、陰鬱に冷たい病室が急にあたたかくにぎやかになった。宝石で作ったような真紅のつぼみとビロードのようにつやのある緑の葉とを、臥ながら灰色の壁に投射して見ると全く目のさめるように美しかった。

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