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TORENDIA

巴里素描

本文約1,700字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

ヴォルテエル河岸やルュクサンブウル公園、モンマルトルなど、パリの多様な名所や風景を訪ね歩く様子を綴る。都市の街角で交わされる会話や道行く人々の仕草、また公園の噴水や寺院、河岸で目にする光景を切り取り、異国の地で展開される生活の断片と市井の人々の営みを瑞々しい感性で描き出す随筆である。

岸田國士

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🎧 巴里素描 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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ヴォルテエル河岸

霧雨。――外套の襟を立てる。

――いくら……これ?

――ラ・ハルプの文学史……六十法。

――さよなら。

小蒸気の笛。

――危ない、滑りますよ、奥さん。

サン・ミシェル街

新調のズボンが短か過ぎる。

(また、一人で飯を食ふのか)

――おい、どうした。

――うるさい。

マロニエの若葉の匂ひ。

ルュクサンブウル公園

朝から噴水を見てゐる。

玩具のヨットが波を切る。

母親の若い日傘が眩しい。

(昨日の希望……明日の憶ひ出……)

(あいつの瘠せ方はどうだ)

(畜生! 新聞の盗み読みをしやがる)

さあ、いらつしやい、いらつしやい。お子供衆のお慰み……ポリシネルの大活躍……。木戸はたつた十銭……。

モンパルナスの基地

――黙つてるね。

――さうでもない。

――何が可笑しいんだ。

――可笑しいもんか。

ボオドレエルの死像の前――

*(人、象徴の森を経て、こゝを過ぎ行き……)

落葉、落葉、落葉……。

コンコルドの広場

――突つ切らうか……? よさう。

シャン・ゼリゼエ街

(われをして百万長者たらしめよ)

シトロエンよりも古風な幌馬車

君は女王――われは御者

日の暮れぬ間に

プウロオニュまで一と走り。

ブウロオニュの森

濡れ場によし。

殺し場によし。

朝は独り者の散歩に――

真昼は子供の遊び場に――

夕暮れは語らひによし。

夜更けては、企らみあるものによし。

春は中年の女と一緒がよし。

秋は処女と――

夏は職業婦人と――

冬は……どんな女とでもよし。

凱旋門――(星の広場)

強盗殺人誘拐犯ナポレオン!

扨て、ヴィクトオル・ユゴオ街に出るにはと…………。

牝牛(巡査)は何処にゐる?

グラン・ブウルヴァール

国際的情慾が服を光らすキャフェ・ド・パリのテラス。

一週間滞在の旅客が宝石屋の飾窓にしがみつく。

それが若し東洋の紳士なら、英語で「面白いものを見せてやるから……」と云つて見給へ。

モンマルトル

巴里の哄笑と吐息――

傍若無人な粋士と感傷的虚無主義者とが踊り子の脚を批評する。

こつちは、オスカア・ワイルドの親友でなければ、ロオトレツクの弟子か。

どつちでもない。それぢや「取り持ち」だ。

日曜服のタイピストなんか御免だと云ふやつ――など。

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