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TORENDIA

端役

本文約680字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

端役を懸命に演じる俳優の重要性と、芸術や人生における役割のあり方を論じる。主役に固執して争う姿勢を退け、名もなき遊吟詩人や舞台裏の小さな仕事に価値を見出す視点を提示する。個々が置かれた立場を全うすることの尊さを説き、第一線で活躍する人々を支える存在として、幕の蔭で自らの役割を果たす矜持を綴る。全編を通じて、人生における主体的な役割選択と満足のあり方について思索を深める内容である。

岸田國士

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🎧 端役 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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端役をすら、一生懸命に演ずる俳優は頼母しい俳優だ。それは、端役しか勤まらない俳優であつてもいゝ。彼は主役に選ばれる幸運に繞り合はずに、その生涯を終ることがあつても、彼は、その生涯を通じて、一座の「必要な人物」であつたことに何の変りもない。端役しか勤めないといふ理由で、その俳優を軽蔑するものがあつたらそのものこそ、芝居を心得ぬものである。

私たちは、芸術の道に於て、一つの端役を演じることで満足しよう。芸術家の争ひは、動もすれば、「役の奪ひ合ひ」である。自ら、「主流」に立たうとする心事の、醜き表はれである。

ゲーテ、イプセン、ドストイエフスキイなどの演じた役割を、諸君も亦演じて見たいのか。諸君はまた、バルザツクを、チエエホフを、バアナアド・シヨオを目標としてゐるのか。それならそれでいゝ。私たちは、諸君の知らない、名前さへもない、一人の遊吟詩人の役に心を惹かれてゐる。

瞬きを一つする役である。

炬火をかゝげる役である。

或は、それこそ、「馬の脚」である。

私たちは、また、人生の過程に於て、一つの端役を受持つことで満足しよう。あらゆる世相の波紋は、あらゆる人間の「役不足」から生じてゐる。

例へば、政治がさうである。如何にその「楽屋」の騒然たることよ!

更に、また、私たちは、あらゆる運動の、殊に、かの社会革命の、極く小さな役割を演ずることで満足しよう。「舞台裏」の仕事をするものがあつてもいゝだらう。

「第一線」に立つ人々よ、明るい舞台で、しつかり見得を切り給へ。大向ふをうならせ給へ。私たちは、幕の蔭でゆつくり煙草でも喫つてゐよう――もう、スヰッチはひねつてある。

完

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