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TORENDIA

今月の感想

本文約4,100字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

日本と世界の対立や民族と人類の問題を背景に、岸田國士が日本の文学者が抱える現状と課題を論じる。文学者は「精神的貴族」として互いを批判し合うことに汲々とするよりも、日本の現実を直視し、文化的な危機を克服すべきだと説く。横光利一の作品に触れつつ、異なる思想を持つ者同士でも文化的な提携を模索し、文学者全体が文芸家協会をはじめとする実務的、社会的課題に積極的に関与する必要性を訴える評論である。

岸田國士

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一

雑誌を一度に隅から隅まで読むのは辛いから、私は、さういふ義務を負はない約束で、この文章を書くことにした。

私が今、拾ひあげたい問題といふのは、当節やはり一番人々の注意を集めてゐる日本対世界、民族対人類の問題であらう。これは私自身についていへば、もう解決ずみなのであるが、理窟をこねればこねられないこともない。たゞ、多くの人の議論を読んでみると、たいていは自分の立場をはつきりさせることに汲々としてゐるだけで、それによつて新しい眼界が開けるやうなものは先づ少いといつていゝ。

つまり、さういふ立場からはさういふより仕方があるまいと思はれるやうなものばかりである。が、それも個人の仕事の順序としてはやらなければならないことであらう。たゞ、何時果つべしとも思はれないのが少々焦れつたい。

私の観るところ、文学者としてさういふ意見を発表してゐる人々は、何れも立派な心掛けをもつてゐる人々で、いはゞ、日本人としても、世界人としても精神的貴族の部類にはいる人々なのである。ほかにいふことがなければとにかく、相手の議論が世に害毒を流すといふ理由で、それ/″\相手を打ち負かさうと意気込むその態度はなるほど真剣ではあらうが、翻つて、その意気込みの相反撥する結果を考へたならば、読者大衆を五里霧中に追込むだけである。そこから、努力してはひ出るものは、荒れ果てた土壌の上に茫然と眼をおとさないわけに行かぬといふのが、ともかく日本の現状なのである。

官僚風に挙国一致などを強ひるわけでは毛頭ないけれど、文学者は、もつと高遠な思想に遊ぶか、もつと卑近な現実を直視すべきであつて、所詮そこでは、日本人の頭で、文化の未来を考へ、日本人の心情で自他の幸福を思ふよりほかないのである。

平明に哲学することのできぬ国語での、半分づつわかりあつた論戦にはお互にもう倦きてもいゝ頃ではないか。対立する思想よりも、共通の観念に興味を持ちはじめたのが例のヒユウマニズムの呼び声だと思つてゐるうちに、ヒユウマニズムが更に頭と尻尾との噛み合ひに終つた形である。これが、民族対世界の奇怪な同士討だとしたら、誰が喝采などしてくれよう。

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