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TORENDIA

骨仏

本文約2,100字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

床ずれで伏せている梶井の元へ、陶芸家の伊良が見舞いに訪れる。かつて機銃掃射で失った妻を自らの窯で焼き、その骨を隠し持つ伊良は、理想の白い磁器を作り上げるため人骨の粉末を混ぜる手法に執着している。骨の調達に苦心する伊良に対し、死を目前にした梶井は、自分が死ねば骨を提供すると申し出る。伊良が狙う純白の磁器への情熱と、背後に漂う異様な空気が、病床の閉塞感の中で次第に露わになっていく。

久生十蘭

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🎧 骨仏 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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床ずれがひどくなって寝がえりもできない。梶井はあおのけに寝たまま、半蔀の上の山深い五寸ばかりの空の色を横眼で眺めていると、伊良がいつものように、「きょうはどうです」と見舞いにきた。

疎開先で看とるものもなく死にかけているのをあわれに思うかして、このごろは午後か夜か、かならず一度はやってくる。いきなり蒲団の裾をまくって足の浮腫をしらべ、首をかしげながらなにかぶつぶついっていたが、そのうちに厨へ行って、昨日飲みのこした一升瓶をさげてくると、枕元へあぐらをかき、調子をつけてぐいぐいやりだした。

那覇の近くの壺屋という陶器をつくる部落の産で、バアナード・リーチの又弟子ぐらいにあたり、小さな窯をもっていて民芸まがいのひねったような壺をつくっているが、その窯でじぶんの細君まで焼いた。

細君が山曲の墾田のそばを歩いている所を機銃で射たれた。他にも大勢やられたのがあってなかなか火葬の順番がこない。伊良は癇癪をおこして細君を窯で焼き、骨は壺に入れてその後ずっと棚の上に載っていた。浅間な焼窯にどんな風にして細君をおしこんだのかそのへんのところをたずねると、伊良は苦笑して、

「どうです。あなたも焼いてあげましょうか。おのぞみなら釉をかけてモフル窯できれいに仕上げてあげますがね」などと空をつかってはぐらかしてしまった。

きょうはどうしたのかむやみにはかがいく。たてつづけにグビ飲みをやっていたが、

「春は野も山も、百合の花盛リーイ、行きすゅる袖の匂のしおらしや……」

とめずらしく琉球の歌をうたいだした。

「いい歌だね。それに似たようなのが内地にもあるよ……野辺にいでて、そぼちにけりな唐衣、きつつわけゆく、花の雫に。それはそうと、きょうはひどくご機嫌だね」

伊良はニコニコ笑いだして、

「まだ申しあげませんでしたが、わたしの磁器もどうやら本物の白に近くなってきたようで、きょうはとても愉快なんです」と力んだような声でいった。民芸では食っていけないので、ファイアンスの模造をはじめたが、予期以上にうまくいきそうなので、手本を追いこすくらいのところまでやってみるつもりでいる、とめざましく昂奮しだした。

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