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TORENDIA

用言の発展

本文約21,100字 ・ 読了時間 約43分

あらすじ(AIが作成しました)

日本語の用言における延言の成立過程を論じる。つくろふやかたらふ等の語に見られる形態と意味の分析を通じ、語根が体言的な意味を持つという視点から、従来の音韻転訛説に異を唱える。用言の将然段や終止段から新たな語が形成された過程を名詞語根説に基づき考察し、す、つ、ぬ、ふ、る等の多種多様な接尾語が結合して発展する仕組みを明かすことで、用言の体系的な成り立ちを解明する。

折口信夫

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われ/\は常につくろふとかたゝかふとかいふ所謂延言の一種を使うて居つて何の疑をもおこさぬ。今日の発音ではつくろふもたゝかふも、みな終止形はおの韻をもつたら行長音なりか行長音なりになつてしまふのであるから疑のおこらぬのも尤である。けれども仮字づかひについて考を及してみるとどうもをかしい。なぜつくろふの ro は rofu でかたらふの ro は rafu なのか、どういふわけでまたたゝかふの ko は kafu でかこふの ko は kofu でなければならぬのか、妙な事だといふと常識はたゞちにかう応へる。

その疑は今日の発音を土台として考へるから起るので、昔はつくろふを tukuro-fu、かたらふを katara-fu と発音したからである、またたゝかふは tataka-fu、かこふは kako-fu と発音通りにうつしたのにすぎないとこたへる。けれども疑はその点ではない。形容詞や動詞をとつて考へてみると、

くや・し  うらやま・し  あぶなか・しい  あら・し  やさ・し  たゝは・し

べか・し  めか・し

うごか・す

さか・る  こが・る  まか・る

などのごとく動詞形容詞助動詞すなはち用言の将然段又はあの韻を以て終つて居る語から他の語につゞいてまた用言になつたらしいものがあるかとおもへば、一方には用言の終止段から他の語につゞいて同じく再びある用言を形づくつたらしく見えるものがある。

いつく・し  いきどほろ・し

おそろ・し  さも・しい

うごも・つ

おこ(<く)・す  つも(<む)・る

こも・る  なゆ・ぐ

などが即ちそれである。然るに、をかしい事が此処にある。それは、意味も形式も殆ど同じ語で、将然言から出たのも終止言から出たのも二つともにあることである。

よそはし=よそほし

このまし=このもし

くるはし=くるほし

よろこはし=よろこほし

きか・す=きこ・す  おもは・す(敬)=おもほ・す  おは・す=おほ・す

とゞろか・す=とゞろこ・す(古事記、岩戸びらきの条)

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