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TORENDIA

半七雑感

本文約2,900字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

岡本綺堂の捕物帳に登場する神田の半七を論じる。痩身で浅黒く表情豊かな容貌を持つこの岡っ引は、江戸っ子らしい淡泊さと親切な性格を併せ持つ。証拠を重視する科学的な捜査手法と優れた直感力を備え、時には厳しい恫喝も行うが、情に厚い紳士的な側面もある。幾人かの手先を束ねる聡明な親分であり、時には失敗を経験しながらも芸術的な探偵として活躍する姿を、著者自身の愛着と共に描く。

国枝史郎

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🎧 半七雑感 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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一

岡本綺堂氏の「半七捕物帳」その主人公の半七に就いて些私見を述べることにする。

「……三十二三の痩ぎすの男で、縞の着物に縞の羽織を着て誰の眼にも生地の堅気とみえる町人風であった。色の浅黒い鼻の高い、芸人か何ぞのように表情に富んだ眼を有っているのが、彼の細長い顔の著るしい特徴であった」

働き盛りの半七といえば、こんなような風貌を持ってたらしい。

「しかしこんな稼業の者にはめずらしい正直な淡泊した江戸児風の男で、御用を嵩に着て弱い者を虐めるなどという悪い噂は曾て聞いたことがなかった。彼は誰に対しても親切な男であった」

こういう性質の男であった。いかにも小説の主人公らしい洒落れていて敏感で親切で、うっかりすると毒婦などには、思い込まれそうな岡っ引なのであった。

最初に手柄を現わしたのは、彼の十九歳の時であった。「石燈籠」と云われる所の、殺人、強盗、誘拐事件で、最初の好運に見舞われた。雪を冠いた石燈籠の笠に、うっすり付いていた足跡に由って犯人の素性を知ったのであった。だが何うも此発見、少々眉唾物である。ひどくバタの匂いがする。西洋流の探索である。ははァ偖は神田の半七、ドイルの探偵物でも読んだかな? などと疑問点を打ち度くなる。だが十九歳の初働きだ。そうそう突っ込むにも及ぶまい。

彼の際立った特色は、「見込み」で人をショピかないことだ。あくまで証拠で押して行くことだ。これが名岡っ引の所以である。

彼は洵に細い物品から、探索の糸口を発見する。「お化師匠」の事件では、穏しい「蛇」によって手蔓を得「筆屋の娘」の事件では、一本の「筆」によって手蔓を得又「少年少女の死」の、その上の部の事件では、「手拭」一筋から手蔓を得た。

わけても上の部の事件では、鮮かな手並を現わしている。踊子が一人殺された。手拭が一筋落ちている。それに鉄漿の跡がある。で半七は断定した。「鉄漿をつけた或る女が、手拭の端を口で銜わえ、それで子供を絞殺したのだ」――で見物の女達を一人一人物色する。果然犯人は目付かったのである。僅々数時間で目付けたのである。

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