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TORENDIA

手習鑑評判記

本文約2,500字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

幸四郎の写実主義や舞台における演技論を中心に、菊五郎の松王丸、吉右衛門の源蔵と宿禰太郎、宗十郎の覚寿と千代、三津五郎の梅王など、多彩な役者たちの芸風や演出のあり方を論じる。また、若手への指導方針や歌舞伎界に漂う旧弊についても言及し、明治以降の写実主義時代を貫いてきた役者たちの舞台姿を精緻に検証しながら、個々の演技の完成度と今後の課題を鋭く批評する、歌舞伎の舞台評を収める。

折口信夫

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その写実主義が、意外に強靭であり、理論的に徹したところのあるものだといふことを、こんどの幸四郎の舞台に見て、しみ/″\快く感じた。日本の自然派のまだ現れなかつた明治三十年前半の写実主義時代から、ともかくこれを貫いて来たのは、この人だけであらう。そのことが、喜寿の賀を舞台の「白太夫」とともに受ける今日になつても、彼の芸の自由を奪ひ、空想を失はせ、何処か完成感の足らぬものにしてゐる理由だとする考へに変りはないが、ともかくも指導者団十郎亡き後、これで今におしとほしてゐることを思へば、一見必然性の乏しい彼の芸に、理論がついて来るわけである。かれの写実主義の自由な発露を、日本の興行舞台が、常に拒んで来たための未完成の大きな偶像に対する心で、幸四郎を改めて熟視した。

だが事実はやはり写実欲を棄てたと見える「撞木刀」のくだりがよかつたし、伝授・道明寺二場の菅相丞を通じて、前後の「身替天神」の件が優れてゐた。これこそ近代「無双の天神」といふことが出来よう。幸四郎ももう、常識的な技巧を超越する時が来たのである。

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