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TORENDIA

まれびとの歴史

本文約5,700字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

日本の古い村の生活や文学発生の姿を考察し、かつて「まれびと」と呼ばれた外来の神を招く風習と、それが時代とともに変化・変容していく過程を論じる。本書は、客を尊ぶ観念の原型が神の来訪にあったと指摘し、中世以降の饗宴における島台や三方などの儀式、あるいは民話や歌謡に刻まれた信仰の名残を辿ることで、神としての「まれびと」が人間としての客人へと移り変わる歴史的変遷を明らかにする。

折口信夫

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🎧 まれびとの歴史 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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こゝに一例をとつて、われ/\の国の、村の生活・家の生活のつきとめられる限りの古い形の幾分の俤を描くと共に、日本文学発生の姿をとり出して見たいと思ふ。私は、まれびとと言ふ語及び、その風習の展開をのべて見る。

普通われ/\の古代・王朝など言うて居る時代のまれびとなる語が、今日の「お客」或は敬意を含んで、「賓客」など言ふ語に飜して、果してかつきりとあてはまるであらうか。雑作もない隣近所の村人の這入つて来るのは、まれびとと言ふだけの内容にそぐはない事は、今の人にも納得出来よう。けれども、遠人或は、久しぶりの来訪に対して誇張を持つて表現した事を心づかないで来た。

実はまれびとは人に言ふ語ではなかつた。神に疎くなるに連れて、おとづれ来る神に用ゐたものが、転用せられて来たのであつた。けれども、単純に来客に阿るからの言ひ表しでなく、神と考へられたものが人になり替つて来た為に、神に言ふまれびとを、人の上にも移して称へたのが、更に古く、敬意の表現に傾いたのは、其が尚一層変化した時代の事であつた。

我々の古代の村の生活に、身分の高い者が、低い境涯の人をおとづれる必要は起らなかつたのである。旅をして一時の宿りを村屋に求めた例は、記・紀・風土記に、古代の事として記録した物語に見えても、平時はさうした必要はなかつた。又、村々の生活に於いて、他郷の人の来訪は、悪まれ恐れられて居た。おなじ村に於いて、賓客と言はれる種類の人は、来る訣はなかつたのである。賓客・珍客の用語例に正確に這入つて来た後期王朝にも、誇張が重なつて、高い身分の人の来訪は、こと/″\しい儀式を張らねばならぬあり様であつた。其は、階級が一つ違うても、真に「稀人」の感じを持つだけの歓迎をした事でも知れる。

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