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TORENDIA

顔の椿事

本文約470字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

川に落ちた夫のため医者を呼びに走るお仙が、隣家の主人に「死んだ」と早合点され顔をこわばらせるが、家に戻ると夫は息を吹き返す、原民喜の掌編。

原民喜

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🎧 顔の椿事 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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お仙の夫は今朝、橋から墜ちて溺れたが、救助されたのが早かったのでまだ助かりさうだった。手当は姑や隣りの人にまかせて置いて、お仙は町まで医者を迎へに走った。医者は後から直ぐ来ると云ふので、お仙はまた呼吸を切らせて山路を走った。すると家の近くの淫祠まで来たところで、隣りの主人とばったり出逢った。お仙は顔色を変へて唖者になった。隣りの主人はこれも二三秒唇を慄はせたまま、ものが云へない。が、やがて彼は頓狂な声でかう叫んだ。

「死んだ、死んだ。」

お仙の顔は暫く硬直したままであったが、ピクリと頬の一角が崩れると、※[#「女+可」、U+59B8、91-8]娜っぽい微笑に変った。それからお仙はともかく隣りの主人と一緒に家へ急いだ。

家へ戻ると、お仙は直ぐに夫の顔を覗き込んだ。お仙の夫は蒲団に寝かされたまま、頭が低く枕に沈んでゐるので、何か怒ってゐるやうな表情であった。その顔を見てゐると、お仙はふと夫が生きて来さうな気がした。と、その時、お仙の夫は急に「うう……」と声を放って眼をひらいた。

「あなたや、あなたや……」とお仙は大声で泣き喚いた。

完

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