TORENDIA
滑走
原民喜
TORENDIA
滑走
本文約2,700字 ・ 読了時間 約6分
あらすじ(AIが作成しました)
雁江は病室で看護師の絹江と出会い、孤独だった心を開いて深い友情を育む。退院後、雁江は上京して活発な社交生活を送り変貌を遂げるが、絹江は家の事情で結婚し、その後不幸な生活を送る。二人の対照的な生き方は交錯し、雁江は奔放な浪費生活の中に身を置くようになる。絹江の訃報に接した雁江は、かつて二人の間にあった友情を回想しつつ、自身の歩む新たな現実と向き合っていく過程を描く。
速度
🎧 滑走 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ
💰 この本を応援する(投げ銭)
1 / 4
雁江の病室には附添ひの看護婦がゐた。彼女と同じ位の年輩だったが、看護婦の方が遙かに大人びてゐた。長い患ひが、この頃やうやく癒えて来ると、雁江は身体だけでなく心までがすっかり変って来るやうな気がした。病室には早咲きのシクラメンがあった。看護婦は四六時中雁江の部屋にゐた、もう一カ月あまりその部屋の空気を一緒に呼吸して来たのだった。病気に罹ると云ふことを雁江はもともと厭でなかった。父がまだ生きてゐる頃など父の愛情が急に濃く細かに感じられた。女学校時代も卒業後も友達が持てなかった雁江は、それでなくても現実の脅迫が強すぎた。病床に就いてしまへば、それがともかく逃避出来た。雁江は満たされない感情のためにも、いくぶん虚無的な、生命を弄びたがる傾向があった。傍の眼には大人しすぎる、沈鬱な女であったが、内部には柔い夢想が育まれてゐた。ただ、何処かに障碍があって、彼女は環境と和合出来なかった。そのため、日常生活と云ふものは彼女にとって、厭らしい重荷であった。彼女は結婚のことを考へると、更に悲観的になった。男性は一面彼女を最も脅す存在であった。崇高な男と云ふものは実在しさうになかった。男は彼女を傷けるためにゐた。雁江は絶海の孤島に生きてゐた。
原民喜の他の作品
TORENDIA
檀一雄「リツ子
・その死」
原民喜
檀一雄「リツ子・その死」
原民喜 ・ 約10分
TORENDIA
広島の牧歌
原民喜
広島の牧歌
原民喜 ・ 約5分
TORENDIA
西南北東
原民喜
西南北東
原民喜 ・ 約13分
TORENDIA
「詩集 登高」
跋
原民喜
「詩集 登高」跋
原民喜 ・ 約2分
TORENDIA
より美しく―よ
り和やかに
原民喜
より美しく―より和やかに
原民喜 ・ 約1分
TORENDIA
夏の花
原民喜
夏の花
原民喜
TORENDIA
苦しく美しき夏
原民喜
苦しく美しき夏
原民喜
TORENDIA
秋日記
原民喜
秋日記
原民喜
TORENDIA
冬日記
原民喜
冬日記
原民喜
TORENDIA
美しき死の岸に
原民喜
美しき死の岸に
原民喜
TORENDIA
死のなかの風景
原民喜
死のなかの風景
原民喜
TORENDIA
火の唇
原民喜
火の唇
原民喜