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TORENDIA

月の隅田川

本文約1,600字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

隅田川を舟で遡る大町桂月と福田瑞村は、共通の友である中村香峰を交えて酒と月を楽しむ。かつて香峰の縁談を周旋した縁で結ばれた三人は、蘆荻の茂る川面で風流な宴を催し、碁を囲んで親交を深める。月日は流れ、香峰は他界し、瑞村とは近所に住む今、著者は変わらぬ山水の風景と移ろいゆく人事の無常を綴る。十年前の思い出と、共に過ごした友への追慕を描く随筆である。

大町桂月

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🎧 月の隅田川 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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荒川堤へとて、川蒸氣に乘りて、隅田川を溯る。つれは福田瑞村なり。われ此の川蒸氣にて隅田川を上下せしこと幾回なるを知らざるが、今瑞村と共とするにつれて、十年の昔の漫ろに偲ばるるかな。

われに中村香峰といふ友ありき。その香峰は、瑞村と友なり。されど瑞村と余とは香峰を介して人物性行を傳聞せしのみにて、未だ相識らざりしなり。

香峰は好男子にして、多情多恨の才子なり。端艇の選手にて、常に墨陀に遊びけるが、その粹な角帽姿は、墨陀の教坊を動かしぬ。名たゝる美人に思はれて契りかはしけるが、いよ/\卒業の曉に到れば、浮世の風は二人につらし。美人の親は香峰の貧なるを嫌ひ、香峰の親は美人の素性の賤しきを嫌ひて、良縁あはや破れむとす。瑞村は侠骨と金とを以てし、余は貧なるまゝに、たゞ舌を以てして、彼此の間に周旋して、事やうやく※[#「纏」の「广」に代えて「厂」、200-7]まりぬ。而して瑞村と余とは、未だ相逢ふの期なかりしなり。

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