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TORENDIA

妖怪談

本文約12,200字 ・ 読了時間 約25分

あらすじ(AIが作成しました)

妖怪学の第一人者であると目される著者が、講演会での実体験を交えながら、妖怪や霊魂に対する自身の見解を語る。多種多様な妖怪の正体、狐つきの実験的考察、さらには心理的作用に基づく解釈を繰り広げ、古今の学説や西洋の事例を引用しながら議論を深める。最終的に、著者は世間で語られる妖怪の正体は「心」そのものであると結論づけ、真の妖怪である心の不可思議さとその解明の難しさについて説く。

井上円了

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エー、今晩は、臨時のお好みに従いまして、御注文のとおり妖怪談を演説することになりました。なにぶん世間では、妖怪学は私の専有物であるかのごとく評判いたしまして、いずれへ参りましても、話を頼むということになると、どうか妖怪の談をしてもらいたいと申します。先年のことであります。私がある所へ参りました。その要件というのは、すなわち哲学館大学の資金募集のために出張いたしましたのにもかかわらず、「寄付話はやめて、どうか妖怪談をして願いたい」というのでございます。そこで私は、「今回、余が参りましたのは、演説をやるために来たのではありませぬ。寄付を願うために参りましたのだから」とお断りをいたしました。ところが彼らが言うには、「ここで妖怪談をして下さるならば、全員こぞって寄付に御賛成申すが、もし話して下さらぬならば、われわれも不本意ながら、御寄付にも賛成はできませぬ」と申したことがございますが、妖怪談というものは、さほどまでにおもしろいものではありませぬから、この辺のことはあらかじめ御承知を願っておきます。

さて、妖怪と申しますると、なにか幽霊かのように思われますが、決して一つや二つのものではありませぬ。その種類といったら百も二百もあります。まず、私が調べたところのもののみでも四百とおりもありますから、とても一つ一つこれをお話ししておるわけには参りませぬ。まあ、そのうちのおもしろいのを一つ二つお話しいたしましょう。それにしても、皆様の御希望もありましょうから、それを伺ってと思って、諸君の希望を問うたのであります。ところが十人十種、ある人は天狗の談を、ある人は狐の話を、またある人はお化けのお話を、ある人は霊魂のと申されまして、なにを話してよいやら一向分かりませぬから、皆様の御注文はいれられませぬ。全体、天狗のことは当地が本家本元でありますから、ただ今お話をいたしませんでも、定めし諸君らの方がくわしく御承知のことでありましょう。これはお預りといたしておきまして、なにか狐についての実験談か、あるいはまた、幽霊の話でもいたしてみようかと思います。

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