南半球五万哩
本文約133,400字 ・ 読了時間 約267分
あらすじ(AIが作成しました)
南半球への周遊を通じ、現地の実情を紹介する紀行文。著者は北半球とは異なる発展の可能性を秘めた南半球の視察を志し、各地の風土や民情に触れる旅に出る。本書には、横浜からの出航以降の航海日記や、船内での生活習慣、欧州の紀行が日記体で綴られる。また、同胞に向けて海外への雄飛を促す目的も込められており、絶海での見聞や船内の異文化体験を交えながら、国運発展のための新しい活動舞台として南半球の重要性を論じる。
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南球五万哩余程、沐雨梳風嘆独行、帰入旧廬有相識、一窓梅月照寒更。 甫水 円了道人
(南半球五万哩余の行程、雨で髪を洗い、風にくしけづり、たったひとりで旅するを慨嘆する。わが家に帰えればなじみのものがあり、窓より見る梅に月は寒さの深まりを照らしている。)
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緒言
今回の南半球の周遊は、二百九十七日間に五万七十五マイルを踏尽せし故、一日に百六十九マイルずつを急行したる割合なり。かかる電光的旅行なれば、精細の観察は到底望むべからず、ただ瞬息の間に余の眼窓に映じたる千態万状を日記体に書きつづりたるもの、すなわち本書なり。
余は元来無器用にして、写真術を知らず、スケッチはできず、余儀なく耳目に触れたる奇異の現象は、言文一致的三十一文字、または二十八言等にて写しおきたれば、本書中にその糞詩泥歌をもあわせて録し、もって読者の一笑を煩わすに至れり。
南半球の旅行中に、便船の都合にて英国を経由し、欧州を歴訪したれば、その紀行を本書中に加え、もって欧州最近の実況をも読者に紹介することとなせり。
本書刊行の目的は、わが同胞をして、今後ますます進んで南球の別天地に活動せしめんとする意にほかならず。今日の青年は「埋レ骨豈唯故郷地、南球到処有二青山一」(骨を埋めるのはなにも故郷の地だけとは限らない、南半球の地の至るところに骨を埋めることのできる青山はあるのだ)の気慨あるを要す。いやしくもこの気慨あるものは、自国を遊園とし、海外を工場とし、よろしく遠く天涯万里に向かって雄飛活躍せざるべからず。国運発展の道も、けだしここにあらんと信ず。
もしこの瑣々たる小紀行が、いくぶんたりともわが同胞の海外発展を資するを得ば、大幸これに過ぎざるなり。
明治四十五年二月十五日著者しるす [#改ページ]
第一、南球往航日記(ホンコン、カントン、マニラ紀行)