清水幾太郎さんへの手紙
本文約17,800字 ・ 読了時間 約36分
あらすじ(AIが作成しました)
雑誌の企画として、三好十郎が社会学者の清水幾太郎に公開書簡を綴る。著者の評論を読み重ねた上で、朝鮮戦争の勃発原因をめぐる見解や、マルクシズムを基盤とするイデオロギーが論理に及ぼす影響について疑義を呈する。さらに、現在の反戦・再軍備反対論が状況に応じて転換される可能性を懸念し、思想家が自身の言論に対して負うべき責任を問い質す内容である。
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清水幾太郎様
だしぬけに手紙などさしあげて失礼ですが、あなたに何か質問してみよとの雑誌「群像」からの注文です。そうすれば、たぶんあなたが答えてくださるだろうというのですが、私にはわざわざあなたにご返事をわずらわせるような質問を出すだけの学問の素養もありませんので、再三辞退したのですが、どんなことでもよいから書いてみろとのことで、しかたなく、ごく短く書いてみます。
私はこれまであなたの著書を二三冊読んだことがあります。それから今はもうなくなった雑誌「日本評論」に書かれた論文をいくつか読んだようにおぼえています。最近では、あなたがほとんど毎月執筆なさっている「婦人公論」や「世界」を読んできました。それらのものの中で、いまでも私の手もとにそろえうるものだけを先月から読みかえしてみました。
すると、それらの中で、あなたの書いていられることは私にかなりよくわかるような気がし、個々の問題についてのご意見にも格別の異論は私にございませんでした。ことがらによってはあなたのご意見に大賛成なばあいもありました。そういうばあいのあなたは、私などがボンヤリとふんぎりわるく考えていることを、キッパリと勇敢に表現なさっているので、私は自分の目を開いてもらっているような気がしました。しかしそれだけにまた、あなたにたいして質問してみたいという興味も、じつはかなり薄れたわけでありました。