TRENDIA CLASSIC

清水幾太郎さんへの手紙

三好十郎

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清水幾太郎様

だしぬけに手紙などさしあげて失礼ですが、あなたに何か質問してみよとの雑誌「群像」からの注文です。そうすれば、たぶんあなたが答えてくださるだろうというのですが、私にはわざわざあなたにご返事をわずらわせるような質問を出すだけの学問の素養もありませんので、再三辞退したのですが、どんなことでもよいから書いてみろとのことで、しかたなく、ごく短く書いてみます。

私はこれまであなたの著書を二三冊読んだことがあります。それから今はもうなくなった雑誌「日本評論」に書かれた論文をいくつか読んだようにおぼえています。最近では、あなたがほとんど毎月執筆なさっている「婦人公論」や「世界」を読んできました。それらのものの中で、いまでも私の手もとにそろえうるものだけを先月から読みかえしてみました。

すると、それらの中で、あなたの書いていられることは私にかなりよくわかるような気がし、個々の問題についてのご意見にも格別の異論は私にございませんでした。ことがらによってはあなたのご意見に大賛成なばあいもありました。そういうばあいのあなたは、私などがボンヤリとふんぎりわるく考えていることを、キッパリと勇敢に表現なさっているので、私は自分の目を開いてもらっているような気がしました。しかしそれだけにまた、あなたにたいして質問してみたいという興味も、じつはかなり薄れたわけでありました。

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