人
スミ(花嫁)
楠一六(花婿)
鈴村彦之丞(スミの父親)
信太郎(放火犯容疑者)
お若(信太郎の恋人)
土方(流れ者)
区長
旅商人(呉服小間物屋)
刑事
ユリ(サーカスのダンサー)
乗合馬車の馭者
サーカスの楽士達。村人達。
軽便鉄道の乗客達。乗務員達。
その他。
音楽 パストラール風に。
○村の誰彼れが昂奮した顔を突合せて、囁き合つてゐる。 (戸外) 「鈴村の彦之丞がとけえ、電報が来たと?」 「なんだろか? 又大地震があつたんづろか?」 「去年の暮れ、森の喜六がとこの娘が紡績で機械に食はれておつ死んだ時、来たきりぢや。此の村さ電報来んのそれ以来だ」 「なんせロクな事あ無えぞな。電報来るようでは、もうはあ、彦之丞がとこも永え事は無えぞ」 「大水が出たのか? 戦争け?」これは駆け付けて来た男。 「あんだ、あんだ?」 「彦之丞がどうしたと?」とスツトンキヨーな声をあげたのはツンボの爺さん。 「電報が来たとよ!」 「雹が降つたのか? そいつは困つたのう」 「違う、電報じや」 「コロの値が出んのか? それはおいねえ!」 「まだ聞えねえ。電報だつ!」 「デンピだと?」 「電報つ!」 「デンピヨーかつ! ウーン」――爺さんが目をまはしかける。泳ぐ。
○それを追つてパンすると、中景に道路一杯に右往左往してゐる豚の群。 その群の中に取りかこまれ、歩き悩んでゐる電報配達夫。カメラそれに近づく。
○親豚子豚とりまぜてヒシヒシと動きまはつてゐる。 ブウブウ、ギイギイ、キユーツと鳴声。 「わーい!」配達夫叫んで、自転車を引きずる様にして、豚の背の波を踏み越え、すべり越えてメチヤメチヤに走り出す。 しかし豚の群も同方向に向つて歩いてゐるので、なかなか抜け出られない。「助けてくれつ!」