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TORENDIA

廃墟(一幕)

本文約67,200字 ・ 読了時間 約135分

あらすじ(AIが作成しました)

荒廃した洋室で暮らす柴田欣一郎一家は、戦後の困窮した生活の中で精神的な均衡を崩しつつある。ある日、教え子の清水八郎が来訪するが、床下で防空壕を塞ぐ作業に没頭していた欣一郎は、衰弱した姿で現れる。長男の誠や次女の双葉らがそれぞれ抱える閉塞感と苦悩が交錯する中、次男の欣二が酒に酔って父に襲いかかり、事態は混迷を極める。家族の荒んだ生活模様と、内に抱える深い葛藤を描く。

三好十郎

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人間

柴田欣一郎

誠     その長男

欣二      次男

双葉      次女

富本三平

圭子

清水八郎

せい子

お光

浮浪者

[#改ページ]

柴田一家が住み、食い、寝ているガランとした大きな洋室。もとはかなり立派な室の、現在では家具調度もなくなり、敷物もはぎとられた裸かの板敷の床。こちらに、仕事机兼食卓の大きな楕円形のテーブル。それを取りかこんで五六の椅子と腰かけ、奥の窓の下にテーブルと椅子。上手のズット手前に坐る式の勉強机。下手の手前の隅が炊事場になっていて、シチリンやバケツや薪や手斧や釜や急造の食器台など。あちこちの壁に寄せて、寝具と書籍が積みあげてある。上手奥の隅の天井が破れてポッカリと黒い大きな穴があき、天井と壁に裂け目が入っている。天井からさがっているシャンデリヤ。奥下手よりに出入口。上手の壁の手前に扉。その奥の壁に立てかけた梯子。

奥の窓から半焼けになった庭木の頭と晴れた夕空。

誰もいない。静かな中に、時々どこかでドシン、ドシンと鈍い音――間。

奥の出入口から清水八郎が出て来る。学生服の左腕が肩の所から無く、上着の左袖はポケットの中に突込んでいる。右手に重そうなフロシキ包をさげている。五六歩入って来てキチンと両足をそろえて立ちどまるが、誰も居ないので、あちこちを見る。――フロシキ包を床におろす。ハンカチを出して額の汗をふく。

同じ出入口からせい子が出て来る。抜けるように色の白い、しなやかな身体つきの三十前後の女。ひとえの着物にモンペ。美しい素足と泥だらけの両手。

せい ……(そのへんを見まわして)あら、どうなさいまして?

清水 ……はあ。

せい 先生は?

清水 は?

せい どっかへ、あの――?

清水 いらっしゃらないんです、どなたも――。

せい へえ。……ひるっから、そこでおよっていらしったんですけどねえ。(上手の壁のわきに敷きっぱなしになっている敷きぶとんを見る)――裏へでも、じゃ、おいでかしら、呼んでまいります。

清水 ――寝ていられると言うと、先生、まだやっぱり、おからだが――?

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