旅日記
本文約22,100字 ・ 読了時間 約45分
あらすじ(AIが作成しました)
種田山頭火の旅日記は、諸国を放浪する著者の日々を綴る。各地の知人を訪ねては酒を酌み交わし、句を詠み、自然や風景に触れながら移ろう季節を描く。仏通寺での対談や旅先での人との交流を通じ、自己の修業の未熟さや煩悩と向き合いながら、流れるままに生きる自身の志を省みる様子を記す。各地の風土や道中で心に浮かんだ詩歌を収め、旅の孤独と解放感、そして人々に支えられて生きる旅人の心境を率直に描き出している。
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道中記
三月卅一日 曇。
夕方になつてやうやく出立、藤井さんに駅まで送つて貰つて。――
春三君の芳志万謝、S屋で一献!
白船居訪問、とめられるのを辞して、待合室で夜明の汽車を待つて広島へ。
春の夜の明日は知らない
かたすみで寝る
句はまづいが真情也。
四月一日 曇、澄太居。
澄太居のよさを満喫する、澄太君には大人の風格がある、私は友人として澄太君をめぐまれてゐることを感謝する、考へて見ると、私のやうなぐうたらに澄太君のやうな人物が配せられたといふ事実はまことに意義深遠なものがあると思ふ。
私は友達にさゝへられて今日まで生きて来た、ありがたいことではないか、私は低頭し合掌して私の幸福を祝福せずにはゐられない、澄太居の前にはよい柊がある、といふわけで柊屋といふ。
朝の鏡にうつりて花の大きく白く
旅の或る日の鼻毛ぬくことも
四月二日 雨、仏通寺(豊田郡高坂村)。
澄太君に導かれて仏通寺へ拝登する。
山声水声雨声、しづかにもしづかなるかな、幸にして山崎益道老師在院、お目にかゝることが出来た。
精進料理をいたゞきつゝ、対談なんと六時間、隠寮はきよらかにしてあかるし。
杉本中佐の話は襟を正さしむるものがあつた、夜が更けたので泊めてもらつた、澄太君はやすらかな寝息で睡れているのに、私はいつまでも眠れなかつた、ぢつとして裏山で啼く梟の声を聴いてゐた、ここにも私の修業未熟があらはれてゐる、恥づべし。
仏通寺(許山一宿)
・あけはなつや満山のみどり
水音の若竹のそよがず
・山のみどりのふか/″\雲がながれつゝ
・塔をかすめてながるゝ雲のちぎれては
・ほんにお山はしづかなふくろう
四月三日 曇――晴れさうな、尾ノ道にて。
朝早くお暇乞して本郷へ。
朝御飯はおいしかつた、道々の風景もよかつた。
澄太君は広島へ、私は三原へ。
やうやく黙壺居をたづねあてたが誰も不在(黙壺君の周囲を何か蔽うてゐるやうな気がする、どうか私の勘のあやまりであるやうに)。
私はいろ/\考へたが、船で広島へひきかへすことにして汽車で尾道へ。