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TORENDIA

砕けた瓦

本文約1,500字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

自らを砕けた瓦と省みる著者が、家族という沙漠に抱く孤独や自身の欠陥と苦痛を綴る。家庭内の理解し合えない関係性や、書かずにはいられない羞恥と悔恨を露わにしながら、個々の孤独な道を歩む覚悟を記す。執筆への執着や、生と真実に対する冷徹かつ情熱的な思索を短文の形式で収め、理解を伴わない結合よりも、理解を伴う分離の幸福について考察する。沈黙の境地を希求しつつも、自身の歌を歌い続ける一人の詩人の赤裸々な自省である。

種田山頭火

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🎧 砕けた瓦 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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私は此頃自から省みて『私は砕けた瓦だ』としみじみ感ぜざるをえないようになった。私は瓦であった、脆い瓦であった、自分から転げ落ちて砕けてしまう瓦であったのだ。

玉砕ということがあるが、私は瓦砕だ。それも他から砕かれたのではなくて、自から砕いてしまったのだ。見よ、砕けて散った破片が白日に曝されてべそを掻いている。

既に砕けた瓦はこなごなに砕かれなければならない。木端微塵砕き尽されなければならない。砕けた瓦が更に堅い瓦となるためには、一切の色彩を剥がれ、有らゆる外殻を破って、以前の粘土に帰らなければならない。そして他の新らしい粘土が加えられなければならない。

家庭は牢獄だ、とは思わないが、家庭は沙漠である、と思わざるをえない。

親は子の心を理解しない、子は親の心を理解しない。夫は妻を、妻は夫を理解しない。兄は弟を、弟は兄を、そして、姉は妹を、妹は姉を理解しない。――理解していない親と子と夫と妻と兄弟と姉妹とが、同じ釜の飯を食い、同じ屋根の下に睡っているのだ。

彼等は理解しようと努めずして、理解することを恐れている。理解は多くの場合に於て、融合を生まずして離反を生むからだ。反き離れんとする心を骨肉によって結んだ集団! そこには邪推と不安と寂寥とがあるばかりだ。

泣きたい時に笑い、笑いたい時に泣くのが私の生活だ。泣きたい時に泣き、笑いたい時に笑うのが私の芸術である。

私は何故こんな下らない事ばかり書くのであろう。私が書く事はすべて、自分の耻晒しであり世上の物笑いである。それは私自身を傷づけるばかりではないか。

そう思わぬではない。こんなくだらない事はもう書くまいと思わぬではない。しかも私は書かずにはいられないのだ。書けば下らない事しか書けないのだ。あさましい心はあさましい事ばかり考える、荒んだ生活からは荒んだ思想しか生れないのだ。……もっと適切にいえば、私には世間の風評や一身の利害を無視しても、表現せずにはいられない欠陥と悔恨と苦痛とがあるのだ。

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