車蝦の茶漬け
本文約630字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
横浜本牧近海で獲れた新鮮な車えびを贅沢に使用した、茶漬けの作り方を説く随筆。醤油と酒で二時間ほどじっくりと煮詰めた佃煮風のえびを、熱々の飯に乗せ、熱い茶を注いで味わう至高の逸品を紹介する。食通をも畏怖させる極上の食材の吟味から、完成したスープの風味に至るまで、江戸前の素材が持つ真の価値と、それを最大限に活かすための料理の心得を綴る。
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えびのぜいたくな茶漬けを紹介しよう。これまた、その材料の吟味いかんによる。これから述べようとするのは、東京の一流てんぷら屋の自慢するまきと称する車えびの一尾七、八匁までの小形のもので、江戸前の生きているのにかぎる。横浜本牧あたりで獲れたまきえびを、生醤油に酒を三割ばかり割った汁で、弱火にかけ、二時間ほど焦げのつかないように煮つめる。
こんなえびは誰の目にも無論見事だし、一尾ずつで上等のてんぷら種になる材料だから、よほど経験のある食通でなければ、やってのける度胸は出まい。これをいきなり佃煮風にするのは、もったいない気がして、ちょいとやりきれないが、それをやりおおせるなら、その代わり無類のお茶漬けの菜ができるわけだ。つまり、本場の車えびを醤油と酒で煮た佃煮である。
例のように熱飯の上に載せる。茶碗が小さければ半分に切ってもいい。それに充分な熱さの茶を徐々にえびの上からかける。すると、醤油は溶けてえびは白くなる。やがて、だしが溶けて、茶碗の中の茶は、よきスープとなって、この上なく美味いものとなる。
季節はいつでもよいが、夏など口の不味い時に、これを饗応すれば、たいていの口の著った人でも文句はいわないだろう。
えびは京阪が悪くて、東京の大森、横浜の本牧、東神奈川辺で獲れる本場と称するものがいい。こういうものを賞味するようにならなければ、食通とはいえまい。
この食通も、てんぷらなら二十や三十はわけなくペロリと平らげるが、茶漬けという名がつくと妙におじけだす。
完