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TORENDIA

雷嫌いの話

本文約11,400字 ・ 読了時間 約23分

あらすじ(AIが作成しました)

重度の雷嫌いである筆者が、雷に対する恐怖と葛藤、そしてそれを克服できず右往左往する日常を綴る。雷が鳴るたびに生きた心地がせず、雨が上がると同時に解放感から急に陽気になる様は滑稽だが、これは電気に対する身体の過敏な反応であると弁解する。愛犬や子供たちとの関わり、かつて行った電車での逃避行など、自身の弱さを隠さずにユーモラスに描写し、雷を恐れる人々の告白に親愛の情を抱きつつ、自らの臆病な本心を率直に打ち明ける。

橘外男

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びしょびしょと、鬱陶しい雨が降っている。雨垂れの音を聞きながら、私は、このペンを握っているのであるが、この文章が雑誌に載って、世の中へ出る時分には、カラッと晴れた暑い夏がやってくると思うと、私は、何ともいえぬ憂鬱な気持になってくる。

夏が、厭なのではない。夏につきものの、ゴロゴロピシャに、また二、三カ月、悩まされなければならぬのかと思うと、心底、気持が暗くなってくる。

いつか、私のところへ来たある雑誌の記者が、あなたは雷がお嫌いだそうですね? と空っとぼけて聞くから、まさかにいい年をして、初めて逢った記者クンに、ほんとうのことをいって、こいつ臆病な奴だなんて思われるのは敵わんから、ええまあね、あんまり好きな方ではないでしょうねと、他人事みたいな顔をしてくれたら、へえそうですかね、その程度のお嫌いなんですかね? 私はまた、青い顔をして蚊帳でもお吊りになるんだと思ってたんですがね。だって小説家のKさんのところへ行きましたら、そうだねえ、まず雷嫌いの横綱は、橘氏だろうね。あるいは、大関くらいかも知らんが、関脇とは下らんよ! って、笑ってられましたからねと、大真面目にいわれて、返事に困ったことがある。ヘッポコ小説家だから、小説の方はなかなか横綱までゆかぬが……横綱どころか! フンドシ担ぎも覚束ないが、ほほう、してみると、雷の方ではいつの間にか、横綱の近くまで出世してるのかな! と、苦笑したことがある。

子供の前で顔色なし

横綱だか、取り的だか知らんが、ともかく、雷はイヤですね、実に厭だ。ゴロゴロピカリとくると、もう生きた心地はせん! いい年をして、子供たちの手前、面目ないから、別段戸棚に潜るわけでもなければ、蚊帳を吊るわけでもない。平気な顔を装うて、机の前に坐ったり、人と話はしているが、上の空だ。一切の思念がことごとく雷にばかりいってしまう。ピカッと光るたんびに、五体が竦む。ハッとしどおしで、眼を閉じてみたり、胆を冷やしたり、鳴り始めてから鳴り終るまで、雷さまのことばかり、考えている。

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