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TORENDIA

白すみれとしいの木

本文約2,400字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

北の方の村で兄から冷遇される心優しい弟は、追放された冬の夜、鬼が住むといわれる山を目指して雪原を駆け抜ける。山中で不思議なおじいさんに救われ、春に故郷へ帰った弟は、再び兄に拒絶され、しいの実を裏庭に埋めて去る。本書は、弟が授けられた白すみれの種としいの実を軸に、弟の無垢な心に触れた兄が過去の行いを悔やむまでの心の変化を綴る。

小川未明

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🎧 白すみれとしいの木 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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一

北の方のある村に、仲のよくない兄弟がありました。父親の死んだ後は兄は弟をば、むごたらしいまでに、いじめました。

弟は、どちらかといえば、気のきかない、おんぼりとした質で、学校へ行っても、あまり物事をよく覚えませんでした。だから、兄は弟をば、つねにばか者扱いにしていたのであります。

弟は気がやさしくて、けっして兄に対して手向かいなどをしたことがありません。いつも兄にいじめられて、しくしく泣いていました。

冬の、ある寒い寒い晩のこと、格別弟が悪いことをしたのではないのに、兄は弟をいじめました。

「おまえみたいなばかは、こんな寒い晩に外に立っているがいい。そして、凍え死んだって、俺はおまえをかわいそうとは思わないぞ。」と、兄はののしりました。

弟は、どうかそんなことはいわずに、家の中に置いてくれいと頼みますのを、兄は無理に弟を戸の外に出して、かぎをかけてしまいました。

家の外は、野にも山にも雪が積もっていました。その晩は、めったにない寒さであって、空は青ガラスを張ったようにさえて、星晴れがしていました。また、皎々とした月が下界を照らしていました。

弟は、雪の上に茫然としていますと、目から流れ出る涙までが凍ってしまうほどでありました。弟は、こんな不運なくらいなら、いっそ河にでも入って死んでしまったほうがいいと思いました。

いつのまにか、寒さのために雪の上は堅く凍っていました。それは鋼鉄のように、飛び上がってもカンカンと響くばかりで、埋まることはありませんでした。

弟は雪の上を渡って、河のある方へいきました。すると、河の水もまた鋼鉄のように凍っていたのであります。

身を投げて死のうにも、水がないし、どうしたらいいだろうと思って、途方に暮れていますと、はるかかなたに、きばのようにとがった高い山が、月に照らされて見えるのでありました。

昔から、あの山の下には、鬼が住んでいるといわれていました。

二

弟は、どうせ死ぬなら、いっそ鬼にでも食われて死んでしまったほうがいいと思いました。それにしても、何十里あるかわかりませんでした。

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