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TORENDIA

羽衣物語

本文約6,100字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

三保の松原に住む若い舟乗りは、ある朝、松の枝にかかっていた光り輝く羽衣を見つける。持ち主の天女が現れ返還を求めるが、若者は天女の美しさに惹かれ、羽衣を返そうとしない。やがて若者は自身の非を悟り、天女に羽衣を返却する。天女は感謝の印として天上の舞を披露し、空へと帰っていく。別れの後、若者は天女との思い出を胸に、生涯を正しく豊かに過ごす物語を描く。

小川未明

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🎧 羽衣物語 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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一

昔は、いまよりももっと、松の緑が青く、砂の色も白く、日本の景色は、美しかったのでありましょう。

ちょうど、いまから二千年ばかり前のことでありました。三保の松原の近くに、一人の若い舟乗りがすんでいました。ある朝のこと、東の空がやっとあかくなりはじめたころ、いつものごとく舟を出そうと、海岸をさして、家を出かけたのであります。

まだ、おちこちの森のすがたは、ぼんやりとして、あたり一面の畑には、白いもやがかかっていたけれど、早起きのうぐいすや、やまばとは、もうどこかでほがらかに鳴いていました。そうして、あちらの空には、富士山が、神々しく、くっきりと浮かびあがって見えました。

これを仰ぐと、若者は、つつましげにえりを正して、手を合わせながら、

「どうぞ、今日も私のからだに、けが、さいなんなく、おかげで、しあわせにくらせますように。」と、いいました。

こう祈りをささげると、なんとなく心がすがすがしく、気もちもはればれとして、しぜん、ふみ出す足に力が入りました。

このとき、どこからともなく、ぷんと松のにおいがしました。いつのまにか、松原へさしかかっていたのであります。木の間から、びょうびょうとして見える海の色、おだやかな波のうねり……。大海原は、まだよくねむりからさめきらぬもののようでした。

「おや。」といって、若者はとつぜん、歩みをとめました。なぜなら、いくぶんもやのうすれかかった前の方に、ふしぎなものが目にとまったからです。なんだか、まぶしいものが、一本の松の木の枝にかかっていました。いままで見たこともないようなものです。

「尾の長い鳥かしらん。それにしては、なんときれいな、大きな鳥だろう。」と、若者は、目をみはりました。

鳥がとまっているのなら、近づけば逃げるだろうと、ちゅうちょしつつ、若者は、じっとようすをうかがいましたが、さらに、飛び立つけはいがなかったのでした。そうして、風にひらひらとゆれるのを見ると、うすい着物のようにも思われました。

「とにかく、いって見とどけよう。」と、若者は用心しながら、一足、一足、それへ近づいたのです。

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