女の姿
本文約1,000字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
明治三十年頃、本郷三丁目の空き家を借りた美術学校の生徒三人は、怪異な体験に見舞われる。外出を拒んで留守番をしていた一人が、蚊帳の外に座る謎の女の姿を目撃する。仲間から神経のせいだと笑われたものの、数日後には残された二人も揃って同じ場所で女を目撃する事態となる。この得体の知れない存在に怯えた生徒たちは、次々とその家を立ち退いていくことになる。不可解な現象に翻弄される若者たちの恐怖体験を描く。
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明治三十年比のことであったらしい。東京の本郷三丁目あたりに長く空いている家があったのを、美術学校の生徒が三人で借りて、二階を画室にし下を寝室にしていた。
夏の夜のことであった。その晩はそのあたりに縁日があるので、夕飯がすむと二人の者は散歩に往こうと云いだしたが、一人は従わなかった。
「杖頭もないのに厭なこった」
「まあ、そんなことを云わずに往こうじゃないか、今晩はきっと美人がいるぜ」
「杖頭がないのに、美人を見たら、尚おいけない、厭だ、厭だ」
「人のすすめる時には往くものだよ」
「厭だ、厭だ、人の汗なんか嗅いで歩るくのは、御苦労なこった」
こんな会話があってから、二人の生徒が出かけて往ったので、家に残った生徒は横になって雑誌の拾い読みをしていたが、睡くなったので蚊帳の中へ入って寝た。そして、とろとろとしていると、何か物の気配がするので眼を開けて枕頭を見た。枕頭になった蚊帳の外には一人の女が坐っていた。生徒はびっくりして眼をったところで、女の姿はもう無かった。
生徒は鬼魅が悪くなったので、寝床を飛びだして二階へあがり、洋燈の燈を明るくして顫えていると、間もなく二人の生徒が帰って来た。
「おい、ちょっと二階へあがってくれ、話がある」
そこで二人の生徒が二階へあがってみると、後に残っていた生徒がみょうな顔をしている。
「どうした、何をしているのだ」
「まあ坐れ、少し話がある」と云って、二人が坐るのを待って「この家は化物屋敷だぜ」
「どうして、何かあったのか」
「君等が出て往った後で、蚊帳へ入って、少し睡って、今度眼を覚まして枕頭を見ると、蚊帳の外に女が坐っていた」
それを聞くと二人の生徒が笑いだした。
「君が恐ろしいと思ってたから、見えたのだ、神経さ」
と一人が云うと、一人が、
「だからいっしょに出よと云うに出ないからだよ」
「とにかく、僕は厭だ、君等が出ないなら、僕一人で出て往くよ」
翌日になると彼の生徒は、二人に別れてそこを出て往った。二人の者は出て往った朋友の臆病を笑っていた。