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TORENDIA

〔同腹異腹〕

本文約460字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

わずか一枚の原稿すら書けずに苦しみながら、自分を殴りたくなるほど嘆きつつも憎めない自分を許してほしいと訴える牧野信一の自嘲的な一文。

牧野信一

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🎧 〔同腹異腹〕 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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僅々一枚か二枚の六号どうしても書けない、書けないといふ事を誇張するわけではない。書く事はいくらでもあるやうで、憤懣や希望や喜悦や悲哀は少なからず持つてゐるやうだが、それが事実余りに強く余りに見苦しいもののやうな感じさへして、書き度くないと思ふ。他人のそでにすがつても訴へ度い悲しみや……は感じてゐるけれども、「いざ云はう」となると「云つたつて仕様がない」と思つてしまふ、とつひ悲しい戯談気が出て全然取るに足りない事などを云つてしまふ様になる、と云つて心の儘を云ふべく余りに自信のない事だ。――などと云つてゐる中にいつの間にか長たらしい文句を書いてゐるやうになる。憎い奴だと云ふ気が起つて、殴つてやらうか、とまで思ふと同時に、堪らなく可愛くもなつて来る、嘘の云へない自分は自分だけで愛さう、と定めて定り切つた慰め(?)をいふやうになつて来る。

今日は六号を書かなければならぬといふ約束だつたのがペンを取つたには違ひなかつた、これを書く事を苦しいとは思はなかつたが、なさけないことを書いてしまつた、親愛なる諸兄よ許して呉れ。

完

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