森の暗き夜
本文約8,700字 ・ 読了時間 約18分
あらすじ(AIが作成しました)
深い森の中の一軒家に住む女は、ランプの下で仕事をしながら孤独な夜を過ごす。ある夜、戸を叩く男を迎え入れたことを機に、女の周囲で不思議な出来事が起こり始める。森から聞こえる泉の音や風の囁きに耳を澄ませるようになった女は、やがて背に負った我が子を失うという悲劇に見舞われる。埋葬の後、夜ごとに聞こえる赤子の泣き声と小さな足音に苦しめられた女は、わが子の冥福を祈り、白い土器に花を供える。
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一
女はひとり室の中に坐って、仕事をしていた。赤い爛れた眼のようなランプが、切れそうな細い針金に吊下っている。家の周囲には森林がある。夜は、次第にこの一つ家を襲って来た。
森には、黒い鳥が棲んでいる。よく枯れた木の枝などに止まっているのを見た。また白い毛の小さな獣物が、藪に走って行くのを見た。枯木というのは、幾年か前に雷が落ちて、枯れた木である。頭が二つの股に裂けて、全く木の皮が剥げ落ちて、日光に白く光っていた。この枯木の周囲には、青い、青い、木立が深く立ち込めていた。しかし、この一本の木が枯れたため、森に一つの断れ目が出来て、そこから、青い空を覗うことが出来る。
女が、白い獣物を見たのは、円い形をした藪から、飛び出て、次の藪へ移るところであった。そこへ立ち寄ると、平地に倒れた草が、刎ね返り、起きあがる所であった。鮮かな、眩しい朝日が、藪の青葉の上にも、平地にも、緑色の草の上にも流れている。
森から出た日は、また森の中に落ちて行く。ちょうど、重い鉄の丸が、赤く焼け切っているように奈落へと沈んで行く。壁一重隔てた、森が沈黙している。怖しい、暗い夜の翼が、すべての色彩を腐らし、滅して、翼たゆく垂れ下がって、森の頂きと接吻したらしい。
女は、やはり下を向いて仕事をしていた。
「今晩は!」……女は、手を止めて頭を上げた。三面は壁である。東の方だけ破れた障子が閉っている。ちょうど、鑿で、地肌を剥り取ったように夜の色が露出していた。
女は、また下を向いて仕事に取りかかった。赤い爛れた目のようなランプが、油を吸い上げるので、ジ、ジー、ジ、ジー呻り出した。
二
片隅の埃に塗れた棚の上に、白い色の土器が乗っていた。いつそこに置かれたのか分らない。土器は、沈黙して、「時」の流れから外に置かれたことを語っていた。気の抜けたような白色が、前の世の、人間が用いていた匂いがする。
女の、頭髪が、赤茶けて見える、女は、東の方の破れた障子に向いて仕事をしている。
「今晩は。」……と力ない、頼むような声がした。
女は、前の仕事を押しのけて、熱心に耳を傾けた。壁の方を見て茫然とした。壁の一面は黄いろく、二面は灰色に塗ってあった。