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TORENDIA

数の子は音を食うもの

本文約1,700字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

数の子が持つ独特の噛んだ時の音の響きや、触覚が美味さを決定づける要因であることを論じる。舌の上の味わいのみならず、口中で炸裂する音響こそが数の子の真味を引き出すと説く。さらに、生や塩漬けよりも干物を戻して食す手法や、余計な味を滲み込ませないための最適な食べ方を提示し、美味い数の子の条件や調理の作法について綴る随筆である。

北大路魯山人

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🎧 数の子は音を食うもの / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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お正月になると、大概の人は数の子を食う。私は正月でなくても、好物として、ふだんでもよろこんで食っている。なかなか美味いものだ。

さて、どんな味があるかと言われてもちょっと困るが、とにかく美味い。しかし、考えてみると、数の子を歯の上に載せてパチパチプツプツと噛む、あの音の響きがよい。もし数の子からこの音の響きを取り除けたら、到底あの美味はなかろう。

音が味を助けるとか、音響が味の重きをなしているものには、魚の卵などのほかに、海月、木耳、かき餅、煎餅、沢庵など。そのほか、音の響きがあるために美味いというものを数え上げたら切りがない。

もともとたべものは、舌の上の味わいばかりで美味いとしているのではない。シャキシャキして美味いもの、グミグミしていることが佳いもの、シコシコして美味いもの、ネチネチして良いもの、カリカリして善なるもの、グニャグニャして旨いもの、モチモチまたボクボクして可なるもの、ザラザラしていて旨いもの、ネバネバするのが良いもの、シャリシャリして美味いもの、コリコリしたもの、弾力があって美味いもの、弾力のないためにうまいもの、柔らかくて善いもの悪いもの、硬くて可いもの悪いもの……ざっと考えても、以上のように触覚がたべものの美味さ不味さの大部分を支配しているものである。そういう意味において、数の子も口中に魚卵の弾丸のように炸裂する交響楽によって、数の子の真味を発揮しているのである。それゆえ、歯のわるい人には、これほどつまらないものはないだろう。

数の子は他の魚とちがい、親にしんの胎中にいる時から、乾物を水でもどしたものとほぼ同じ硬さをもっていて、生で食べてもパリパリ音を発するものである。このごろは冷蔵のおかげで生の数の子や、生を塩漬けしたものが都会にきて賞美され、料理屋なぞは、見た目が美しいところから、これを用いているが、味本位の美味さからいうと、一旦干ものにしたものを水でもどしてやわらかくして、昔からの仕来り通りの数の子にして食べるほうが美味い。

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