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TORENDIA

深山の秋

本文約4,700字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

秋の末、年老いたさるは空に神聖な獣たちの行列の幻影を見ます。冬の到来を前に皆で仲良く遊ぶよう天からの啓示と受け取ったさるは、りすやきつねと共に山の動物たちを呼び集めて宴を計画します。一方、山道の茶屋に住む主人は、酒を求めて現れたくまを前に、己の身の安全を守るために知恵を巡らせます。秋が深まりゆく山中で、動物たちが絆を深める穏やかな一日と、人間が抱く打算的な心の対比を描きます。

小川未明

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🎧 深山の秋 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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秋も末のことでありました。年老ったさるが岩の上にうずくまって、ぼんやりと空をながめていました。なにかしらん心に悲しいものを感じたからでありましょう。夏のころは、あのようにいきいきとしていた木の葉が、もうみんな枯れかかっていて、やがては、自分たちの身の上にもやってくるであろう、永い眠りを考えたのかもしれない。たとえ、はっきりと頭に考えなくとも、一時にせよ、その予感に囚えられたのかもしれない。いつになく、遠い静かな気持ちで、彼は、雲のゆくのをじっと見守っていました。

夕日は、重なり合った、高い山のかなたに沈んだのであります。さんらんとして、百花の咲き乱れている、そして、いつも平和な楽土が、そこにはあるもののごとく思われました。いましも、サフランの花びらのように、また石竹の花のように、美しく散った雲を見ながら、哀れな老いざるは、しかし、自分の小さな頭の働きより以上のことは考えることができませんでした。

「あの先にいくのは、山にすんでいるおおかみくんに似ているな。そういえば、つぎにいくのは、あの大きいくまくんか、その後から、旗を持っていくのは、いつか森であったきつねくんによく似ている。」

そう思って、雲の姿をながめていると、自分の知るかぎりの山にすむ獣物も、小鳥も、みんな空の雲の一つ一つに見ることができるのでありました。それらは、楽しく、仲よくして、神さまの前に遊んでいました。

彼は、この不思議な有り様を、岩の上でじっと見上げていました。

「ああわかった。私も年を老ったから、せめて達者のうちに、一度、みんなとこうして遊んでみよと、神さまがおっしゃるにちがいない。」

こう思いつくと、老いざるは、悲しそうに一声高く、友だちを呼び集めるべく、空に向かって叫んだのです。

いつしか、空の雲は、どこへか姿を消してしまいました。もし、気がつかなかったら、永遠に知られずにしまったような、それは、はかない天の暗示でありました。

老いざるの叫び声をききつけて、すぐにやってきたのは、近くのくるみの木に上っていたりすであります。

「どうしたのですか、さるさん、なにか変わったことでも起こったのですか?」と、ききました。

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