一
国許の人間は頑固でねじけている。
――女たちがわるくのさばる。
――江戸からゆく者は三年と続かない。
江戸邸ではもうずっと以前からそういう定評があった。また事実がいつもそれを証明してきた。特に若くて重い役に赴任したような者は、例外なしに辛きめにあうということだ。
――理由はいろいろあるだろうが、どこの藩でも、藩主は江戸うまれの江戸そだちであるから、自分が家督して政治を執るばあいには、しぜん身近で育って気心の知れた者を、重要な役につかいたくなる。これはどうしてもそうなりがちである。
国許そだちの人間は性格がとかく固定的で、融通性に欠けている例が多い。環境が根づよい伝習でかたまっているためもあろう。暢気な者はばかばかしく暢気だし、偏屈な人間はしまつに困るほど偏屈である。
――この藩ではその点がことに際立っていた。おそらく気候風土の関係もあるのだろうが、一般に傲岸粗暴であり、きわめて排他的な気分が強かった。
――江戸の人間はふぬけで軽薄だ。
――人にとりいるのが上手だ。
――口さきがうまくて小細工を弄する。
かれらはかれらでこう信じていた。そしてその信念を決して譲ろうとはしなかった。
笈川玄一郎を送るために、親しい友達なかまで別宴を張って呉れたが、集まった七人のうち三人まで国詰になった経験があったから、話はしぜんその方面のことでもちきり、なかばからかいぎみの忠告や意見がしきりに出た。
「なにより困るのはすぐ刀を抜くことだ、議論に詰るとすぐ決闘だからな、絶えず決闘がある」
萩原準之助が云った。
「――尤もどっちか少し傷がつくと、勝負あったでひきわけになるんだが、議論のほうもそのままひきわけだからね、結果としてはなんにもしなかったと同じなんだ」
「あれが自慢のお国ぶりなんだ、もっとも武士らしいやりかただと思ってる」
「もうひとつふしぎなのは女たちの威勢の強いことだね、威勢というより権力にちかいものだ」井部又四郎がそう云った。
「――夫人や令嬢たちが幾つも会をもっていて、音曲や茶や詩歌の集まりをするのはまあいい、堂々と男を客に招いて酒宴を催すのにはびっくりしたよ」