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TORENDIA

さるすべり

本文約12,000字 ・ 読了時間 約25分

あらすじ(AIが作成しました)

慶長五年の会津征伐を巡り、徳川家康の軍令で白石城からの撤退を命じられた伊達政宗は、これを承諾する。本丸にいた物頭・浜田治部介は、偶然その密談を耳にする。主君の退却指示により、白石城は孤立を余儀なくされるが、治部介は援軍を拒絶し、僅かな兵とともに城を死守する道を選ぶ。苛烈な戦火の中、妻の最期を看取りながらも、徳川の軍略に従い上杉勢を白石に釘付けにするという大局を守り抜く姿を描く。

山本周五郎

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一

「かねて御推量もございましたろうか、治部少輔(石田三成)こと、上方において挙兵をつかまつり、伏見はすでに落城と申すことでござります」おどろくべき言葉を耳にして、思わず起きあがろうとしたが、あやうく自分のいる位置に気づき、浜田治部介は息をころしてじっとしていた。衝立屏風の向うでは使者がつづけて云う、「急報によって内府(徳川家康)には小山の陣をはらい、江戸へ帰城とあいさだめましたが、こなた少将(伊達政宗)どの御所存はいかがにございましょうや、もっとも御妻子は大阪おもてに質としてござあることゆえ、いちがいにお味方のあいなりがたき次第も、人情しかるべしと内府存じよりにございます」

「中途ながらその御趣意はしばらく」政宗がよくとおるこえで使者の口上をさえぎった、「内府さま御恩顧はまさむね夢寐にも忘れ申さぬ、たとえ妻子を質としこれを焚殺さるるとも、神明に誓って内府さまへのお味方に変心はおざらぬ、この儀はしかと申上げておきます」「お言葉ねんごろには存じまするが、御老臣がたともよくよく御談合あそばされませんでは」「政宗存じよりに反く家来はいちにんもおり申さぬ、御念におよばず内府さま御采配を承りましょう」

使者は押しかえして老臣との会議をもとめた、政宗は一存の動かざることを誓いぬいた。くどいと思われるほどのやりとりがあって、それならばと使者はかたちを正し、家康の軍令を伝えた。

「少将さまにはすみやかに白石城をひきはらい、岩手沢(陸前玉造郡)に陣をととのえて会津を御牽制なさるべしとのことにございます」「白石より退却せよと仰せあるか」政宗は意外なことを聞くというように、ややこえをはげまして反問した。

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