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TORENDIA

柘榴

本文約12,300字 ・ 読了時間 約25分

あらすじ(AIが作成しました)

若くして結婚した真沙は、夫である昌蔵の激しい愛情表現や世俗的な言動に馴染めず、次第に夫を遠ざけるようになる。やがて昌蔵は家を出てしまい、二人は別れる。時を経て、年寄となった真沙のもとで庭師として働く伊助が、ある日事故に遭う。真沙は瀕死の伊助に、かつての夫の面影を見出し、自分がかつて抱いた拒絶や過ぎ去った日々に思いを巡らせながら、その真実を確かめようと問いかける。

山本周五郎

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一

真沙は初めから良人が嫌いだったのではない。また結婚が失敗に終ったのも、良人の罪だとは云えない。昌蔵のかなしい性質と、その性質を理解することのできなかった真沙の若さに不幸があったのだと思う。

松室の家は長左衛門の代で、中老の席から番がしら格にさげられ、更にその子の伊太夫の代で平徒士におちた。長左衛門は癇癖が祟って刃傷したためであるし、伊太夫は深酒で身を誤った。二代で中老から平徒士までおちるのは稀だと云っていいだろう。昌蔵は祖父がまだ中老だった頃の矢倉下の屋敷で生れ、九間町のお小屋で幼年時代を、そして十一の年からは御厩町の組屋敷の中で育った。――階級観念のかたくなな時代に、こうして転落する環境から受けるものが、少年の性質にどういう影響を与えるかは云うまでもあるまい。それに元もと祖父や父の感情に脆い血統の根もひいていたことだろうし、不幸はすでに宿命的だったという気もするのである。

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