TRENDIA CLASSIC

殉死

山本周五郎

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「どういうわけなんだ、いったいこれはどうしたというのだ」八島主馬はすこし腹立たしそうにまわりの人々を見まわした、「まるでめしゅうどを警護しているようではないか、五郎兵衛、きかせてくれ、これはどういうわけなんだ、みんな此処でなにをしているんだ」「まあ待て、仔細はいまに話す」久米五郎兵衛がなだめるように云った、「なにもそこもとを窮命しているわけではない、おれたちはまあいわばとのい詰めのようなものなんだから」「とのい詰めだって」「云ってみればそんなところだ、いいからもう少しこうさせて置いて呉れ」主馬はぶきげんに[#「ぶきげんに」はママ]向き直り、仏壇の鉦をうちならしてふたたびしずかに誦経をはじめた。

故ごしゅくん因幡守浅野長治侯が逝去したのは五日まえ(延宝三年正月九日)のことだった。そして今日は鳳源寺で葬りの礼がとりおこなわれた、その式に列して家へかえると、まもなくいま此処にいる五人の者がたずねて来て、そのままそばに付いてはなれないのである。べつに用事があるともみえなかった、話すこともとりとめて緊要と思えるものはなかった。そのくせもう宵も過ぎようという時刻なのにうごくけしきがない。――いったいどういうわけなのか。主馬は唱名しながらもそのことが胸につかえてしかたがなかった。

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