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TORENDIA

殉死

本文約10,700字 ・ 読了時間 約22分

あらすじ(AIが作成しました)

故因幡守長治の逝去に際し、殉死の禁をめぐり福尾庄兵衛と八島主馬の二人は対照的な道を歩む。主馬は藩のために生きることを選ぶ一方、庄兵衛は才能ある主馬を生かすため、自ら墓所に留まり亡き主君のお伽を続ける覚悟を固める。周囲の懸念や婚約者である小松の献身的な支えをよそに、庄兵衛は己の信念を貫き、お家への奉公と死者への真心を胸に、霧深い山あいの地で静かな日々を過ごす。

山本周五郎

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一

「どういうわけなんだ、いったいこれはどうしたというのだ」八島主馬はすこし腹立たしそうにまわりの人々を見まわした、「まるでめしゅうどを警護しているようではないか、五郎兵衛、きかせてくれ、これはどういうわけなんだ、みんな此処でなにをしているんだ」「まあ待て、仔細はいまに話す」久米五郎兵衛がなだめるように云った、「なにもそこもとを窮命しているわけではない、おれたちはまあいわばとのい詰めのようなものなんだから」「とのい詰めだって」「云ってみればそんなところだ、いいからもう少しこうさせて置いて呉れ」主馬はぶきげんに[#「ぶきげんに」はママ]向き直り、仏壇の鉦をうちならしてふたたびしずかに誦経をはじめた。

故ごしゅくん因幡守浅野長治侯が逝去したのは五日まえ(延宝三年正月九日)のことだった。そして今日は鳳源寺で葬りの礼がとりおこなわれた、その式に列して家へかえると、まもなくいま此処にいる五人の者がたずねて来て、そのままそばに付いてはなれないのである。べつに用事があるともみえなかった、話すこともとりとめて緊要と思えるものはなかった。そのくせもう宵も過ぎようという時刻なのにうごくけしきがない。――いったいどういうわけなのか。主馬は唱名しながらもそのことが胸につかえてしかたがなかった。

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