本文へ移動
TORENDIA

夏草戦記

本文約21,000字 ・ 読了時間 約43分

あらすじ(AIが作成しました)

慶長五年の夏、百二十余人の武者隊が岩代国竹置の部落へ到達し、野営を行う。部将が宿所を定める中、一人娘の初がこの一隊を訪ねてくる。彼女は襲撃から救われた経験から、ある武士を追って旅を続けていた。やがて隊は移動し、後に残された真新しい墓へ娘が夏草を手向けて祈りを捧げる。名もなき武士たちの魂が、時代を超えて人々の血の中に生き続ける様子を、過ぎ去る兵士たちの足跡と草むらに残る墓を通じて描き出す。

山本周五郎

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 30

一

慶長五年(一六〇〇)六月のある日の昏れがたに、岩代のくに白河郡の東をはしる山峡のけわしい道を越えてきた一隊百二十余人のみしらぬ武者たちが竹置という小さな谷あいの部落へはいって野営をした。……かれらは馬標も立てず、旗さし物もかかげていなかった。みんな頭から灰をかぶったように埃まみれで、誰の顔にも汗の条が塩になって乾いていた。疲れきっているとみえてむだ口をきく者もなく、部落へはいるなりぱたぱたと地面へからだを投げだす者が多かった。部将は三十二三になる眼のするどい小柄で精悍そうなからだつきの男だったが、村へ着くとすぐ二人の副将をつれて村長の家をおとずれた、そしてそこを宿所にきめ、各隊の番がしらを呼び集めて野営の命令をだした。

山本周五郎の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本