TRENDIA CLASSIC

日本婦道記

山本周五郎

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お石が鈴木家へひきとられたのは正保三年の霜月のことであった。江戸から父の手紙を持って、二人の家士が伴って来た、平之丞は十一歳だったが、初めて見たときはずいぶん色の黒いみっともない子だなと思った。

「お石どのは父上の古いご友人のお子です」

そのとき母はこう云って彼にひきあわせた、

「ご両親ともお亡くなりになって、よるべのないお気のどくな身の上です、これからは妹がひとりできたと思って劬ってあげて下さい」

母がそう云うとお石はそのあとにつけて、きちんと両手をそろえ、

「どうぞおたのみ申します」

と云いながらこちらを見あげた。まなざしも挨拶の仕ぶりも、五歳という年には似あわないませた感じだった。平之丞はひとりっ子なので、時どき弟か妹がひとり欲しいと考えることがあった、けれども並みよりはからだも小さく、痩せていて色が黒くて、おまけに髪の赭いお石の姿は、少年の眼にさえいかにもみすぼらしくて、可愛げがなかった。――妹ができたといってもこれでは自慢にもならない、そう思ってちょっと頷いたきり黙っていた。

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