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TORENDIA

日本婦道記

本文約15,000字 ・ 読了時間 約31分

あらすじ(AIが作成しました)

鈴木家へ引き取られたお石は、平之丞の妹として育てられる。幼少期は容姿をからかわれることもあったが、聡明で明るい性質から次第に周囲の信頼を集めるようになる。成長し平之丞の想い人となったお石は、自身の出生にまつわる秘密を抱え、平之丞の家名を案じて生涯独身を貫く決意をする。長年、肌身離さず持っていた翡翠の文鎮を平之丞に見せ、過去の秘めた想いを告白するまでの一途な生きざまを描く。

山本周五郎

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一

お石が鈴木家へひきとられたのは正保三年の霜月のことであった。江戸から父の手紙を持って、二人の家士が伴って来た、平之丞は十一歳だったが、初めて見たときはずいぶん色の黒いみっともない子だなと思った。

「お石どのは父上の古いご友人のお子です」

そのとき母はこう云って彼にひきあわせた、

「ご両親ともお亡くなりになって、よるべのないお気のどくな身の上です、これからは妹がひとりできたと思って劬ってあげて下さい」

母がそう云うとお石はそのあとにつけて、きちんと両手をそろえ、

「どうぞおたのみ申します」

と云いながらこちらを見あげた。まなざしも挨拶の仕ぶりも、五歳という年には似あわないませた感じだった。平之丞はひとりっ子なので、時どき弟か妹がひとり欲しいと考えることがあった、けれども並みよりはからだも小さく、痩せていて色が黒くて、おまけに髪の赭いお石の姿は、少年の眼にさえいかにもみすぼらしくて、可愛げがなかった。――妹ができたといってもこれでは自慢にもならない、そう思ってちょっと頷いたきり黙っていた。

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