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TORENDIA

日本婦道記

本文約10,700字 ・ 読了時間 約22分

あらすじ(AIが作成しました)

紀州徳川家の年寄役である佐野藤右衛門は、藩譜編纂のため烈女節婦の伝記「松の花」を校閲する日々を送っていた。ある日、長年連れ添った妻が病没し、遺品の整理を通して藤右衛門は妻が質素な生活の中で献身的に家を支えていた事実に気づく。伝記に名を残す女性だけでなく、蔭で努力を続ける名もなき女性こそが真の節婦であると悟った彼は、その思いを稿本に加筆し、妻の生き様を心に刻みながら静かに仕事へと向き合う。

山本周五郎

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一

北向きの小窓のしたに机をすえて「松の花」という稿本に朱を入れていた佐野藤右衛門は、つかれをおぼえたとみえてふと朱筆をおき、めがねをはずして、両方の指でしずかに眼をさすりながら、庭のほうを見やった。窓のそとにはたくましい孟宗竹が十四五本、二三、四五とほどよくあい離れて、こまかな葉のみっしりとかさなった枝を、澄んだ朝の空気のなかにおもたげに垂れている。藤右衛門はつやつやとした竹の肌に眼をやりながら、肩から背すじへかけて綱をとおしたようなつかれの凝をかんじた。

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