本文へ移動
TORENDIA

危し※[#感嘆符二つ、1-8-75] 潜水艦の秘密

本文約8,100字 ・ 読了時間 約17分

あらすじ(AIが作成しました)

府立第×中学の生徒・春田龍介は、校庭で拾った謎の暗号文を解読する。その夜、物理学者である父の実験室では、国家機密に関わる潜水艦機関の実験が秘密裏に行われることとなる。しかし、実験中に妹の文子が何者かに連れ去られ、父の発明品を狙う軍事探偵の影が浮かび上がる。龍介は自ら考案した信号法を駆使し、妹の救出と発明の防衛に立ち向かう。

山本周五郎

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 10

拾った暗号紙

「何だろう、これは?」府立第×中学の校庭には、七月の真昼の陽が照りつけていた。眼の眩むようなその陽ざしの中で、蹴球の猛練習に熱中している二年級の生徒が四五人、いまトラックの一隅にかたまって、一枚の紙片を取巻きながら盛になにか議論していた。

「なんだ下らない、出鱈目書だよ」

「だが、暗号文らしいぜ」

「暗号なら春田に見せてやれ。彼奴人間の作った暗号なら、どんな物でも解いて見せると威張っていたじゃないか」

「そうだ春田に見せて困らせてやれ」皆は口々にそう囃したてながら、紙片を持って、校舎の方へ走っていった。そして藤棚の下で春田龍介君がやってくるのに出会った。

「春田君、君はいつか人の作った暗号文ならどんな物でも解いてみせるといったね」春田君は濃い眉を神経質に動かしながら、しっかり頷いたきりで黙って微笑んでいる。

「よし、じゃあこれを解いて見たまえ」

春田君は友達から紙片を受けとると、よく見もせずに――「明日の練習時間までに解いてくるよ」と無造作にいったまま、すたすたと向うへ去っていった。皆は思わず、

「がっちりしているなあ」と呻いた。

春田龍介は二年級の級長をしていた。お父様の春田博士は大学の物理の教授で、その感化もあったのであろう。龍介君は学校中での秀才、頭の良さといったら春田君の質問には、先生でも時々答えにつまるくらいだった。

謎の暗号

家にかえった春田君は、勉強部屋に閉じこもって、例の紙片を取出し、叮嚀に検べはじめた。それは極く上等の純白の模造紙にペンで書いたもので(○ツエイ ハ ヨ○八時三十分 ヨリ行ウ ○ショップ ○ンセン同伴ス)というだけの文句である。春田君は二時間ばかりというもの、夢中になって、その暗号を解くことに熱中した。

そしてまず文句の中の○の部分へ文字を当嵌めて、左のような文章を作り上げたのである。(サツエイ ハ ヨル八時三十分 ヨリ行ウ ビショップ ヤンセン同伴ス)

「サツエイとは撮影のことだろう」と春田君は呟いた「ビショップとは英語で牧師さんのことだな、すると、(夜八時半にヤンセンという牧師をつれていって撮影を行う)というだけのことだ……」

山本周五郎の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本