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TORENDIA

殺生谷の鬼火

本文約9,400字 ・ 読了時間 約19分

あらすじ(AIが作成しました)

東京理科大学生の椙原敦夫は、故郷の椙原村で起きた母の死や父の危篤を知り帰郷する。村では殺生谷の怨霊による鬼火の祟りが噂され、周囲は恐怖に包まれていた。妹の千代子も殺生谷へ引きずり込まれそうになる中、敦夫は古文書の偽造を見抜き、背後に潜む人間の悪意と鬼火の正体を突き止めるべく行動を開始する。伝説を利用した巧妙な犯罪を暴き、土地に根付く因縁と怪異の真相に立ち向かう物語を描く。

山本周五郎

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凶報到る

東京理科大学生の椙原敦夫は、北海道の奥地に在る故郷の妹から、

(母死ス父危篤至急帰レ、至急ヲ要ス)

という意味の電報を受取った。

「なんだい是は」

敦夫は訳が分らぬという顔で呟いた。

「母さんが死んで父さんが危篤だって? ――またチイ公の悪戯じゃないのか」

春の休暇で帰省した時には父親こそ数年来の病床にあったが、妹の千代子も母親も揃ってぴんぴんしていたし、他に何も変った事が起りそうな状態は見当らなかった。

「然しまさか母死すなんて事が冗談に云えるもんじゃない、殊に依ると何か変事でも起ったのかも知れない、――兎に角行ってみよう」

敦夫は直ぐ出立の支度をした。

至急という事なので、朝の旅客機で旭川まで飛び、そこから青沼線の軽便鉄道に乗込んだのが、七月はじめの雨催いの午後一時であった。故郷の椙原村は旭川から東北へ三十里ほど入った僻地で、まるで馬車に毛の生えたような軽便鉄道が一本通っているきり、全く文明から掛離れた山間に在った。

駅へ着いたのが午後七時過ぎ、電灯が無くて石油ランプの吊ってある、凡そ時代ばなれのした駅の建物を出ると、――横手のところに爺やの平造が馬車で迎えに来ていた。

「えらく早いお着きでがすな」

「旭川まで旅客機で来たからね、――旅客機、飛行機だよ」

「そんな危ねえ物にお乗んなすって」

「まあ宜い、出掛けよう」

敦夫は馬車へ乗った。――馬車はまだ灰色の残照のある道を、荒地の方へ向ってがたがたと走りだした。

「一体何事が起ったんだ、爺や」

「恐ろしい事が始まっただぞ若旦那さま、奥さまは非業にお亡くなり遊ばすし、大旦那さまも御容態が危ねえだ、――村の者の中にも人死にがあるだよ」

「訳を話して呉れ、訳を」

「殺生谷の鬼火が祟り出しただ、御領分内の者ぁみんな生きた空ぁねえでがすよ」

平造の話を簡単に記そう。

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