TRENDIA CLASSIC

謎の頸飾事件

山本周五郎

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新年宴会

正月七日の宵。――七草粥の祝儀をそのままに、牧野子爵邸では親族知友を招待して、新年宴会を催した。

集る者十人。その中でも特に人々の注意をひいたのは、少年探偵としてめきめき名をひろめた春田龍介君とその助手である拳骨壮太、それから警視庁での名探偵と呼ばれる樫田刑事の三人があることだった。

この三人は、去年東京を中心にして行われた大きな犯罪を探偵して、立派な功績をのこした両大関で、その夜はたがいに初めて会うのであった。

「僕春田です」伯父である牧野子爵から紹介された時、春田君は謙遜して自分から握手を求めながら、言葉ひくく話しかけた。

「お噂はいつも伺っております、どうぞよろしく」

しかし樫田刑事は、なにをこの小僧がといわんばかりに、ちらと眼をくれただけで、

「やあ!」といったまま、春田君のさし出した手を握ろうともせず、さっさと自分の椅子の方へ立去っていった。

傍にいてこの無礼な態度を見ていた拳骨壮太は、ぎりぎり歯噛みをして「坊っちゃん、あっしゃあ彼奴をのしちゃうからね!」と腕をまくった。しかし春田少年はそんなことで怒るような小胆者ではない。立去って行く刑事の後姿を見送って肩を竦めてふふんと笑いながらいった。

「よし給え、あの人はいつか自分から僕の手を握りにくるようになるよ、ここが我慢のしどころさ」

そして壮太の肩を叩いた。

「さあ皆さん」牧野子爵は集った客たちに向って叫んだ。

「食堂の用意ができたそうです、今夜は北京亭から腕利の料理人を呼んできて、邸で料理させた純粋の北京料理を御馳走いたします。さあ、どうぞお席へ」

客達は話しながら子爵の後から食堂へ入って行った。

黄色ダイヤの頸飾

食事の間、お客達の話は春田君の手柄話に賑わった。

牧野子爵はむろん自分の甥の自慢だから、黙ってひきさがっているはずはない。例の潜水艦の秘密事件だの、幽霊殺人事件だの、それからつい最近に解決したばかりの、あのメトラス博士一味の骸骨島の事件だの。自分の邸に珍蔵してある黄色ダイヤの頸飾を中心にして、ヤンセン牧師との一騎討事件だのを、我ことのように話しつづけるのであった。

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