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TORENDIA

寸感

本文約1,300字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

探偵小説という名称やその形式について、佐藤春夫が独自の批評を綴る。本作は、このジャンルの存在意義を明快かつ奔放な理智の遊戯と定義する。また、日常の中に探偵小説を位置づける自然主義的洗練の必要性や、事実上の事件の発生と解決の過程を重視し、複数の作者が分担して物語を構築する連作形式を理想的なあり方として提案する。文字が持つ面白味を重視し、従来の探偵小説の在り方に対して新たな視点と可能性を提示する評論である。

佐藤春夫

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🎧 寸感 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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探偵小説といふ言葉は、すでに余り面白い言葉でない。誰か何とかいゝ名称を附けかへてほしいやうな気がしてゐたが、そいつが探偵趣味といふ雑誌の名になつたのだから実は雑誌を見る度に内容は面白いと思ひながら名前には少々閉口してゐる。全く探偵趣味などは悪趣味だよ。同人諸君の中にも、聞けば同感の諸君があるさうだが、尤も今になつては、どう変へる事も出来ぬかも知れぬ。これは些細な事だが、今日所謂探偵小説を書いてゐる諸君の大部分が、文字に対して鈍感、といふ程でなくとも兎も角も、余り敏感でない証拠にならなければいゝがと思つてゐる。

全くあの種類の作品の面白味の余程多くの部分は、文字が与へるものである。極端に云へば刻々の文字さへ面白ければ内容はいらぬと云つて見たいくらゐだ。

探偵小説はどういふ訳で存在の意味があるか、そんなやぼな事を訊く人間も近頃あまりないかも知れぬが、でもあるかも知れぬやうな気もする。それでちよつとその問はれもしない事の返事を考へて見たのだが、さういふ問合せの往復葉書が、何処からか舞ひ込むとすれば、返事は次の如し。

明快なる理智の遊戯として。

奔放なる空想の遊戯として。

但し遊戯といふものはいゝものである。遊戯をつまらないものと思ふのは下等な功利的精神と、よぼ/\になつた肉体との気の毒な考へ違ひである。

僕は近頃外国のものも、我国のもあまり読まないから何とも断言は出来ないけれども、一体今迄の探偵小説にはあまり特別異常な事ばかりで、家常茶飯事の中には探偵小説が無いらしいのだが、又それが自然な現象でもあるのであるが、探偵小説の世界にも一ぺん自然主義的洗礼を与へて見たいものだ。さうすれば案外新しい方面が開けるかも知れぬ。才能ある作者に求む。

此頃連作小説とやらいふ変なものが流行してゐる。シユミツト、ボンがやらうが、シユニツレルがやらうが、下らない無意味な事は結局下らない無意味な事に過ぎない。

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