おくさま狐の御婚礼
本文約2,400字 ・ 読了時間 約5分
あらすじ(AIが作成しました)
九本ある尻尾を試すために死んだふりをした古狐と、その妻である狐の物語を描く。夫が死んだと知った妻のもとへ、次々と求婚者が訪れるが、妻は亡き夫と似た特徴を持つ者以外を退ける。古狐は御婚礼の席で正体を現し妻を追い出すが、後に妻は条件を満たす若い狐との結婚を決める。本作は、再婚を望む狐の様子や、次々と現れる求婚者たちとのやり取りを、猫の案内を通じて滑稽に描写する。
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一番めの話
むかしむかし、あるところに尻尾の九本ある古狐がいました。古狐は、じぶんのおくさまが心がわりしたのではないかとうたぐって、おくさまを試してみることにしました。ふるぎつねは、腰かけ台の下へ大の字なりになって、ぴくりとも動かず、まるでぶち殺された鼠のように、死んだふりをしていたのです。
おくさま狐は、じぶんのおへやへ行って、とじこもりました。おくさま狐のお女中のおじょうさん猫は、おへっついの上にすわって、ぐつぐつ、煮ものをしていました。
やがて、ふる狐の死んだことが知れわたると、おくさま狐をおよめさんにほしいという者が、いくたりも会いにきました。お女中は、だれだか、戸口に立って、こつこつと戸をたたいているのを聞きつけました。立って行って、戸をあけてみると、としの若い狐が一ぴきいて、こう言いました、
「なにしてらっしゃるの? おじょうさん猫ちゃん、
ねてらっしゃるの? おきてらっしゃるの?」
おじょうさん猫が、へんじをしました、
「あたしなら、ねてやしないわ、おきてるわ。
なにしているのか、知りたいの?
ビールをぐつぐつ煮えたてて、バタを、なかへ入れてるの、
あなた、あたしのお客になって?」
「いや、ありがとう、おじょうさん」と、狐が言いました、「おくさまぎつねは、どうしていらっしゃるの?」
お女中はへんじをしました、
「おくさま狐は、おへやにおいで、
かなしかなしと泣きはらす
かわいいお目え目は紅絹のように紅い、
お狐のふるとのさまがお逝去じゃもの」
「おじょうさん、どうかおくさまにおっしゃってください、わかい狐がまいりましたってね、その狐が、おくさまに、およめさんになっていただきたいのですってね」
「おわかさま、かしこまりました」
ぴたり、ぱたりと猫が行く、
とたん、ぱたんと戸があいた、
「おきつねおくさま、いらしって?」
「いるわよ、ねこちゃん、いることよ」
「おくさまを、およめにほしいというかたが」
「あらまあ、そうお、どんなごようす?」
「そのかたもね、おかくれになった殿さま狐みたように、黄いろいような青いようなみごとなしっぽが、九本あること?」