TRENDIA CLASSIC

酒も食べ物も

山本周五郎

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「どういう物が好きか」と訊かれるたびに、私は「うまい物が好きです」と答える。皮肉でもないしふざけているのでもない、事実そのとおりなのである。あたりまえなことを言うな、と鼻白む人もあるかしれないが、世間には馬の飼葉同様な物でも平気で食べて、結構満足そうにしている人が少なくない、ということもおわかりになるでしょう。

私は小さいじぶんから食いたしんぼで、食いしんぼに「た」のはいるくらいで、おまけに子供らしくない小面の憎いもの好みをしたらしい。

「ほんとに子供のようじゃない」

おふくろや親類の人たちに、よくそう言われたのをまだ覚えている。鯛の刺身より脂の乗った小ぶりの目刺のほうが好きだったし、身の多い胴のところより頭の部分がよく、平目の切身はえんがわだけ集めて食べる、牛肉でも適当に脂肪が付いていないと箸を出さなかった。めしはどんなに少なくってもいいが、おかずは三品ぐらいないと機嫌が悪く、これにはおふくろはずいぶん気骨を折ったらしい。

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