
はじめに
CBDという言葉を耳にする機会が増えた。
健康食品、化粧品、リラクゼーション、睡眠、スポーツ、医療研究――。
世界ではCBD市場が急速に拡大し、多くの企業や研究機関がその可能性に注目している。
一方、日本では今なお「大麻」という言葉だけが独り歩きし、多くの誤解や偏見が残っている。
私はこの業界に身を置いて六年以上になる。
単なる販売者ではない。
栽培から始まり、原料の選定、製品開発、品質管理、法規制への対応まで、CBD事業の現場を実際に歩いてきた。
その過程で感じたのは、世の中には正しい情報があまりにも少ないということだった。
CBDは魔法の成分ではない。
すべての病気を治す万能薬でもない。
しかし同時に、単なる流行商品でもない。
そこには確かな科学があり、長い歴史があり、そして未来への可能性が存在している。
私はこれまで健康食品や化粧品原料の研究開発にも携わってきた。
脂質代謝に関する特許技術、機能性素材の開発、サイタイエキス、発酵プロテオグリカンなど、多くの天然素材と向き合ってきた。
その経験から言えることがある。
人類は古代から自然界に存在する植物や微生物の力を利用しながら文明を発展させてきた。
薬草もそうだ。
発酵技術もそうだ。
そしてCBDもまた、その延長線上に存在している。
本書ではCBDだけを語るつもりはない。
大麻草の歴史、人類と植物の関係、日本人と麻文化、最新の研究、世界の規制状況、そして私自身が経験してきた素材開発の現場についても紹介する。
さらに、日本が世界に誇る発酵技術や天然機能性素材の可能性についても触れていきたい。
なぜなら私は、CBDの未来は単独ではなく、日本の持つ発酵文化や素材開発技術と融合することで、さらに大きく広がる可能性があると考えているからだ。
本書はCBDを推奨するための本ではない。
反対に否定するための本でもない。
歴史と科学、そして現場の経験からCBDを見つめ直し、一人ひとりが自分自身で判断するための材料を提供することが目的である。
大麻草は敵なのか。
それとも味方なのか。
その答えは、感情や先入観ではなく、歴史と科学の中にある。
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