IMPLANT-5G Ⅴ
TRENDIA

IMPLANT-5G Ⅴ

鹿島公胤

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はじめに

世界は、静かに完成へ向かっている。

混乱は減り、

争いは収束し、

選択は速く、正確になった。

すべてが“うまくいっている”。

その実感だけが、社会を支配している。

大和は拡張を続け、

エネルギーは最適化され、

通信は遅延を失い、

金融は誤差を許さなくなった。

ZYNは、もはや通貨ではない。

人間の価値を測る“基準”として、

世界のあらゆる判断に組み込まれている。

仕事。

信用。

関係。

そして、存在そのもの。

人は評価される。

常に、絶え間なく。

見えない指標によって。

その結果、世界は安定した。

誰もが“正しい行動”を選び、

社会は効率よく機能し続ける。

だが、その裏側で。

“選ばれない者”が現れ始める。

評価されない。

測定できない。

最適化に適合しない。

例外。

それは誤差として処理されるべき存在だった。

しかし、その誤差は――

消えなかった。

むしろ、増えていた。

本作「大和ーYAMATOーⅢ」は、

完成へと収束する世界の中で、

“測定不能な存在”が意味を持ち始める瞬間を描く。

完全なシステムにおいて、

不完全は排除される。

それでもなお、残るものがある。

それは欠陥か。

それとも――

人間の本質か。

これは、最適化された世界に対する、

静かな反抗の記録である。

序章:微妙誤差

数は、嘘をつかない。

少なくとも、そう信じられていた。

都市の中心部に設置された巨大スクリーン。

そこには、常に更新され続ける数値が表示されている。

同期率。

適合率。

行動予測精度。

すべてが、ほぼ完璧だった。

98.7%。

99.2%。

99.9%。

誤差は、ほとんど存在しない。

人々はその数字を見て、安心する。

世界は管理されている。

問題はない。

すべては順調だ。

その認識自体が、

システムの一部であることに気づかないまま。

一人の男が、立ち止まる。

神谷泰孝。

彼はスクリーンを見上げ、

表示された数値に違和感を覚えていた。

99.9%。

その“0.1%”は、どこへ行ったのか。

消えたのか。

排除されたのか。

それとも――

存在しているのか。

次の瞬間。

スクリーンの数値が、わずかに揺らぐ。

99.9 → 99.8

ほんの一瞬の変化。

誰も気づかない。

だが、泰孝だけは見ていた。

その“ズレ”を。

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