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第一章 明治8年2月13日
明治8年、西暦1875年の2月13日。
この日、すべての国民が、名字を名乗らなければならなくなりました。
いまから、およそ150年前のことです。
150年という数字は、筆者の計算です。
名字を持っていなかったのか、というと、そうではありません。
江戸時代にも、武士以外の人が、名字を持っていた例はありました。
ただ、公の場で名乗ることは、原則として、許されていなかったのです。
それが、明治になって、変わりました。
最初は、名乗ってもよい、という許しでした。
次に、必ず名乗りなさい、という義務になりました。
その二つのあいだは、わずか5年です。
5年という数字は、筆者の計算です。
では、そのとき、人々は、どうやって名字を決めたのでしょうか。
先祖代々の名字を、知っている人もいたでしょう。
けれども、わからない人は、どうしたのでしょうか。
あなたの名字は、いつ、どうやって、決まったのでしょうか。
この本では、この疑問に、公的な資料をもとに、答えられる範囲で、答えていきます。
使った資料は、国立公文書館のニュース、法務省のページ、国立公文書館のデジタルアーカイブです。
それに、国立国会図書館が運営している、図書館のレファレンスの事例を二つ、加えました。
年や日付は、資料のあいだで一致したものだけを使います。
最初にお断りしておきます。
この本は、名字の歴史の本です。
夫婦の名字の制度のことや、いまの戸籍の制度の議論は、扱いません。
また、特定の名字の由来や、名字の数や順位の話も、しません。
明治の初めに、名字がどのように、みんなのものになっていったのか。
その事実だけを、落ち着いて、たどっていきます。
では、まず、名字を名乗れなかった時代、江戸時代から、見ていきましょう。
第二章 江戸時代の名字
江戸時代の人たちは、名字を持っていなかったのでしょうか。
こう聞かれたら、多くの人は、持っていなかった、と答えるかもしれません。
江戸時代に名字を持つのは、武士だけだった、とよく言われるからです。
けれども、国立公文書館のニュースは、これを誤解だと書いています。
武士以外の人も、名字を持っていた、というのです。